「ハンガー・ゲーム」って何でこんなにアメリカで当たったの?

ハリウッド映画は常に全世界へ向けて作品を提供していると思っているが、それでも自国でのみヒットし、海外では不振な興行成績に終わる作品も多数存在する。特にコメディがその最たるものなのだが、他にも黒人向けに作られたものであったり、ホラー作品だったりする。ほとんどの場合、その作品に出演している俳優の知名度は日本では低い。よって公開されればまだ良しという扱いになってしまうのだ。

「ハンガーゲーム」は残念ながら、見事にその例に当てはまる1本になってしまった。北米での興行成績はなんと4億ドルを超えているのに、日本では大ヒットの声は聞こえてこない。正に出演者の知名度、原作(ヤングアダルト小説とのこと、日本で言うライトノベルか?)の認知度などに日米の格差を感じて、アメリカがヒットしても日本は難しいというパターンだ。配給の角川映画は、この後に作られる続編も公開してくれるのか心配。まぁ、逆にアメリカでのヒットの仕方が異常だと思いますがね。

本国での製作、配給はライオンズゲート。この会社は本当に今年は元気がいい!現在公開中の「エクスペンタブルズ2」もヒットさせ、ついこの間まで「ソウ」を代表作とするホラーの会社だった、そのイメージはすっかり無くなったぞ。サミット共々インディペンデントの製作会社の勢いを感じますな。

この物語の設定は何も新しくない。日本の「バトル・ロワイアル」との類似が取りざたされたが、むしろ有名なところを引き合いに出せば、これはサバイバル・ゲーム版「トゥルーマン・ショー」ではないか。この登場人物たちが知らないところで、その行動がメディアで中継されるというパターンは、他にもジェラルド・バトラーの「GAMERゲーマー」、WWEのレスラーだったスティーブ・オースティンが主演した「監獄島」などがある。

特に「監獄島」は製作はWWEフィルムだが、全米配給は同じライオンズゲート。またスティーブは「エクスペンタブルズ」にも出演とライオンズゲートにはゆかりの俳優。そして物語は選ばれた囚人10人が釈放という報酬のため、ある島で生き残りをかけ殺し合い、それが全世界へ中継されるという、ほとんど一緒のストーリーだ。これをむさ苦しい男連中がやるとB級映画となり、憂いを帯びた少女が妹に変わって戦えば大ヒット娯楽超大作になってしまうのであった!変なの?

憂いを帯びてはいるが、美人度は欠けるジェニファー・ローレンスが主演。「ウィンターズ・ボーン」の演技力を評価されて、インディペンデント映画で活躍をするのかと思いきや、こうした大作で有名になるパターンは「トワイライト」のクリステン・スチュワートと似ているなぁ。こういうところもサミットとライオンズゲートは本当に競い合っているというか、真似ているというかですね。

他の出演者は「ゾンビランド「2012」など、最近のアメリカ映画の変な役だったらこの人、ウディ・ハレルソン。ご贔屓役者のスタンリー・トゥッチ、「崖っぷちの男」でも頑張ってたエリザベス・バンクス、さすがの貫禄のドナルド・サザーランド、変わったところではレニー・クラヴィッツ!一見すると豪華だが、それで劇場へ駆けつける日本人はいませんよね。

2003年に「シービスケット」という競馬映画の傑作をものにした監督のゲイリー・ロスにしてみれば、この作品の出来は及第点であるが、それ以上ではない。撮影を担当しているのがイーストウッド映画でお馴染みのトム・スターンだったので、クレジットを見て驚いてしまった。イーストウッド映画(出演だけの「人生の特等席」もだった)以外で、彼のクレジットを意識して見たのは多分初めてじゃないかしら。でもウィキペディアでの彼のフィルモグラフィーに、この「ハンガーゲーム」ないですよ!