キャメロン・ディアスの壊れ具合を楽しもう!

ウィル・フェレルマーク・ウォールバーグの「「アザーガイズ 俺たち踊るパイパー刑事<デカ>!」もそうだったが、本来はソニー・ピクチャーズが配給するべき作品なのに、日本最古の映画会社で今年めでたく100周年を迎えた日活が配給する洋画がまた登場した。キャメロン・ディアス主演の「バッド・ティーチャー」である。てっきりソニーピクチャーズからダイレクトDVD発売になってしまうのだろうと諦めていたから、公開するという情報には飛び上がって喜んだ。

それにしても、こうした公開状況は昔では考えられないことだ。アメリカ映画で日本の配給網が確立しているスタジオの作品は、あくまで自社の作品として配給を行なっていたはずだ。それがアメリカ独自の文化色が強い作品については(ブラック・ムービー、コメディ、ホラー)、たとえその映画が全米で1億ドル稼ぐ大ヒット作品だとしても、未公開になってしまうようになった。まぁ、ソフト発売というビジネスの受け皿があるだけに、未公開であっても興行のリスクを考えると、損得勘定としては上映しないという選択肢になるのだろう。

そこで登場したのが、インディペンデントの配給会社である。いわゆるメジャーが降りた映画を配給し始めたのだ。最終的にパッケージ権利がメジャーに残る場合、全部インディペンデント配給会社側に移る場合と様々なようだが、特に『映画秘宝』系が好むタイプの作品であれば、拾われる傾向にあるようだ。「アザーガイズ〜」も、この「バッド〜」も無事に日活が拾ってくれたのである。感謝!

では、作品そのものの出来はいかがであったかというと、ハリウッドが一番陥りやすいパターンの映画だった。すなわちビッグネームのスターに頼りきる企画からスタートした失敗作なのである。そのスターとは、もちろんキャメロン・ディアスであるが、さすがの彼女も、かつての若々しさは失われつつあり、この玉の輿にのることだけに執念を燃やす不良教師役はキツイし、イタイ!これはアクション・コメディ「ブラック&ホワイト」のリース・ウィザースプーンにも感じたことだなぁ。

でも、よく見てるとキャメロンはこの役の『キツイし、イタイ』ことを、分かって出演し“新しい役柄”に賭けたことが読める。そして失敗したのがこの映画。しかしその心意気は好ましく、これはキャメロンの壊れ具合を楽しめばイイ作品ということになる。そしてラストに分かるが、壊れているのは実は彼女の周りの登場人物(一番まともだと思っていたジャスティン・ティンバーレイクが特に)すべてで、彼女だけがマトモだったのだというオチになっていて、ちょいとヤラレた感もある。

この小学校高学年を適当に教える不良教師の授業の様子が笑える。自分が寝ていたいから、授業は全部ビデオを見せることで済ます。最初がなんと1987年の日本未公開の「落ちこぼれの天使たち」だ。彼女は小学生に向かって“知らないの?エドワード・J・オルモスとルー・ダイアモンド・フィリップスでしょ”とか言っているが、そりゃ、無理でしょ。実はこの映画、高校教師ものの傑作で、J・オルモス唯一のアカデミー賞ノミネート作。この女不良教師、ナイスなセレクションと爆笑!

その後も彼女の授業はビデオ鑑賞ばっかりで、次はモーガン・フリーマンが映ったので、多分ニック・ノルティラルフ・マッチオも出ていた「りんご白書」(公開当初、なんじゃ、この「いちご白書」もじりの変な邦題は!って怒ったなぁ、原題は『TEACHERS』)と思うが、あまり自信がない。結局、この教師は先生もののビデオばっかり見せるだけ。次はミシェル・ファイファーが映る。そう「デンジャラス・マインド/卒業の日まで」ですね。で、最後の授業で映し出されたのが「スクリーム」、このオチが最高!

作品は微妙だが、こうしたコネタで喜ばせてくれれば良しとしよう!