アメリカでしか受けない、お下劣ガールズムービー

今年のアカデミー賞の授賞式の中継を見た人なら、ちょっとオバさん入った女優が4〜5人出てきて、座を掻き回していた場面を見て『誰なんだ、コイツら?』と全員感じただろう。そう、彼女たちこそアメリカ国内で1億5千万ドル以上の興行成績を打ち立てたコメディ映画「ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン」の主要キャストの面々だったのです。2011年6月のサマーシーズン映画として登場、謳い文句としては「セックス・アンド・ザ・シティ」を超えた!の大ヒットとなった。

ところが待てど暮らせど、作品は公開の兆しは一向になく、結局本編を観る前にオスカーの授賞式で出演者の顔を確認することになった。幸いこの映画はユニバーサルスタジオ作品なので、今年100周年の勢いに乗って(ホントか?)無事公開になったが、正規のユニバーサル作品の配給会社の東宝東和は関わらなかったようだ。では、本当にアメリカでヒットすれども日本での公開を躊躇する内容なのか?

いやぁ〜、キツイです!このお下劣さで笑って面白がれるほどアメリカ人感覚はございません!これでは日本での公開までに時間が掛かったのも良く分かるよ。要するに「SATC」のような都会感覚はカケラもなく、画面から判断するにミルウォーキーの地方都市が舞台の、結婚出来ないでウダウダ言っている三十女と、その友達(その中の一人は結婚していて、その拘束された生活に嫌気を感じている)を面白おかしく描いたのだが、その面白おかしくの感覚がついて行けないのだ。

三十代独身女性アニーは手作りケーキのお店が失敗し、恋人にも逃げられてどん底リリアンという親友に話を聞いてもらうのが唯一の慰め。しかしリリアンの婚約と、その式のための「ブライズメイドのまとめ役」となってしまったのが問題の始まり…。と、うまく描けば全世界に受け入れられる要素のある話にはなっているのだが。

数年前から日本では受けにくい外国特有の笑いを『お馬鹿コメディ』(アメリカだけでなく、「オースティン・パワーズ」から「ジョニー・イングリッシュ」などのイギリスもある)と称するようになったが、この映画の場合は始末が悪いとことに、その能天気な『お馬鹿』にもなってなく、三十女の焦り、嫉妬、意地などリアルなものを笑っているのだが、もう陰険としか感じられないのだった。日本人の三十代の女性は面白く感じるのだろうか?

特にウエディングドレスを見に行く一連の場面の品の無さには呆れた。また主人公の女性のヒネくれた性格によって、男の優しさをあっさり拒否して、後でウジウジと悩む姿は映画的にまったく美しくない。そう、この映画の決定的なマイナス要因は女優の容姿だけではなく、描かれているキャラクターのハートがまったく美しくないのだ。品格がないと言い換えてもいいが、最終的には登場人物の誰にも感情移入が出来ないから困るのである。

ラストも主人公の成長と捉えがちだが、あの描き方は予定調和のご都合主義のラストでしかない。そのへんも含め、作者はそれらをコメディとして確信犯として作っているのだろうが、こちらはそこの描写を望んでいなかった訳であるから、これはもう『好き』か『嫌い』かに分かれるだけなのだろう。久しぶりに『こういう映画って嫌いだなぁ』と思ってしまったのでした。