「テッド」のヒットについての日米の違いは?

今も新宿シネマカリテで上映しているのに、いささかビックリだった「テッド」について、遅ればせながら、ちょっとだけ…。

久しぶりに配給会社の宣伝戦略が功を奏した形で興行が盛り上がりましたねぇ。クマのぬいぐるみがダーティワードを喋るという映像だけに絞り込んで、アメリカ大ヒットのコメディだということ以外は、どんな話か誰が出ているのかなどは一切触れず、それ以上知りたければ映画館に行くっきゃないという戦略であった。

コメディというジャンルはアメリカで大ヒットしても、日本では公開されにくいケースがある。笑いのツボの日米の差で『公開してもヒットを望めない、よって宣伝費かけるだけ無駄』と判断してダイレクトでDVD化してしまうのだ。同じユニバーサル作品のアメリカ大ヒットの「ブライズメイズ」なども、よく公開されたなぁという感想しかない。よって、この「テッド」も、もしかして未公開作になるのかな?と思ってしまっていた。

公開初日にシネコンに駆けつけた人の話では、同日公開の山田洋次監督の「東京家族」より盛況だったとのこと。そして2週目からは、そのシネコン内の一番大きなスクリーンに移動したとのこと。確かに平日夜のバルト9でも9割がた埋まっていたのにビックリだった。

では、ヒットの要因は?その要因が日米同じなのか?

アメリカでは誰が出ているかが重要。主演はマーク・ウォールバーグだ。「ファイター」でオスカーに手が届きそうだった俳優が、このようなコメディに出ることに驚く。そして共演は「ブラックスワン」のミア・クニス。そこに全く触れない、触れても仕方がない日本ではひたすらテッドと言う名のぬいぐるみの姿だけだった。しかし作品のレイティングはR15?それは映画を見れば分かること。可愛いぬいぐるみ目当てで来た女性客は『ドン引き!』となってしまうかもしれんなぁと思っていたが、若い女性客は何の抵抗もなく笑っているようですな。

登場人物たちのダーティワード、ドラッグ、SEX、サイコ的犯罪などおよそぬいぐるみと噛み合わない展開を受け入れられる若者はについては、日米同様の笑いのツボだろう。確かに見終わった若いアベックの『チョー面白かった!』の感想は間違いじゃないだろう。しかしアメリカでヒットした要因“1985年から少しも大人になれず、そのカルチャーにどっぷりハマり続けているダメな大人”というツボには付いて来られないだろう(まぁ、仕方がない)。

おそらくアメリカで一番受けた場面は「フラッシュゴードン」の主演俳優サム・ジョーンズの登場場面じゃないだろうか。ここがミソ、もしこれがマーク・ハミルで「スターウォーズ」だったら、そんなに笑いは取れないし、悲愴感の方が先に立ってしまうだろう。この微妙な違い、そのサジ加減が絶妙である。himself、herselfがこんなに多いのに、茶化せる相手ばかりのバランス感覚だ。

この本人登場(ノラ、トム・スケリットライアン・レイノルズなど)とジョニー・カーソン、MTVのステファニー、ブリジット・ジョーンズなど、TV画面内の登場の小ネタも効いている。この85年から90年代のカルチャーに翻弄され続ける大人たちの無様ぶりが可笑しい。そもそも85年こそ「バック・トゥ・ザ・フューチャー」という、過去のカルチャーとのギャップで『受けた』先輩格の作品が産まれた年ではないか。

こうした小ネタが、意外や嫌味なく散りばめられていて、ダーティな部分を緩和してしまった訳だ。何と、最後にテッドが逃げ込むところは(どっかで見たことあるぞぉ、そうだ!「ザ・タウン」だ!で小躍りしてしまった!)、ボストン・レッドソックスの本拠地フェンウェイ・パーク。メジャーリーグ好きとしては、トドメを刺されてしまいました。