これでいいのか?「ワイルド7」、これでいいのだ!中井貴一

制作発表のニュースを聞いた原作ファンの人たちは、かなり悪い予感がしたそうだ。こちらとしては望月三起也の原作に対し、それほど熱心な読者ではなかったので、正直なところ『今頃になって、映画化してどうするんだろう?』と思った程度だった。よって、キャラクターそれぞれのキャストに対する違和感もなかった。ちゃんと超法規的武装集団としてアクションしてくれれば、それで良しだったのだ。

ところが、映画そのものが違和感だらけでは話にならない。一番の不満は7人の武装集団が、少しもカッコよくないことだ。カッコよくバイクに乗って欲しい、カッコいいガンプレイが見たい!カッコよく制服を着こなして欲しい、それら観客がアクション映画の画面に対して、当然のごとく要望するものが全く満たされていないのだ。オープニングの銀行襲撃犯に対し、バイクで登場して蹴散らすと思いきや、サム・ペキンパーの「コンボイ」よろしく、大型トラックで相手の車を壊して足止め、後は撃ってお仕舞いときた。ここから既に違うでしょ!

犯人側との街中での銃撃戦をキチンと描いて欲しかったし、お手本としてはマイケル・マンの「ヒート」があるではないか!とばかりイライラしっぱなしの状況だ。要するにカッコいい『画』が少しも撮れていないのである。更に大きな問題点は、7人がチンピラバイカーにしか見えないところだ。すべての人間が過去を持つという点は分からないでもないが、その佇まい全てが下品なのだ。彼らの集合場所の倉庫みたいな所を、もし学校に置き換えたら、ほとんど「クローズZERO」でっせ!

そんな品のない野郎を纏める設定の役を、きっちり品格を持って演じているのが中井貴一だ。う〜ん、ここでも貴一っちゃんに頼らなきゃならん状況なのか?「平清盛」「麒麟の翼」のようなザ・ドラマならまだしも、アクション映画なんだから、貴一っちゃんのお力を借りることなく、映画作ろうよぅ!とは言え、それは中井貴一という俳優がいかに凄いかの裏返しでもある。逆に、脂の乗り切った俳優はこうなんだ、と実感出来るってもんだ。2012年も大活躍の予感ですね。

羽住英一郎監督は、よっぽどバイクより大型トラックがお好きなようで、クライマックスの突入も、そのトラックをマシンガンで蜂の巣にする。おい、おい、それってイーストウッドの「ガントレット」でしょ。それはリスペクトとは言いたくないぞ!そしてトラックからバイクが飛び出してくるが、ここはアクション映画なら、トラックごとビルへ突入でしょ!と、まったく王道場面に向かってくれない。相手の警官を絶対に狙撃してはならないという見事な足枷がちっとも生きないのも不満。

続いての不満はアクション映画なのに、なんで深田恭子なの?という場違いなキャスティング。若干、役柄の選択肢が狭くなってしまう女優なのは仕方がないが、それにしても「夜明けの街で」にしても、この映画にしても深キョンではないでしょ。パターンかもしれないが、やはりこの復讐に燃える女の役は黒木メイサか、小池栄子あたりでしょ。いつまでも「ヤッターマン」の深キョンが良かったと引きずっていては失礼かもしれないが、これはキャスティングミスの感の方が強いのである。

カーアクション場面ひとつとっても、ハリウッドで通用するアクション場面が作れていない。でも、そのカーアクション場面の凄い韓国映画「哀しき獣」は、フォックス・インターナショナルが出資しての製作となったように、ハリウッドは才能には出資するのだ。

天下のワーナー・ブラザースの配給作品が、これでいいのだろうか?