グンちゃんVSガンホさん、軍配はどちら?

第一次韓流ブームの四天王は、まだ頑張っているが、そうした人気者より、アン・ソンギ、チェ・ミンシクソル・ギョングあたりの演技優先の俳優の方に惹かれた。その中で一番はソン・ガンホだった。スターでも、アイドルでもなく、本物の俳優だ。しかし「シュリ」は見ているのに、まったく印象に残っていない。作品を“よくハリウッド映画を勉強しているなぁ”と思った程度で、韓国映画そのものが、本当に面白いと感じるのはもう少し後のことだ。

ポン・ジュノ監督の「殺人の追憶」(2004年作品)が強い印象を残すが、作品自体はあまり好きではなく、同年の映画「大統領の理髪師」のガンホさんの方が、ずっと良かったと思っている。「グエムル」の怪物に対抗できるのも、ガンホさんだけでしょう。ラストの笑顔には誰も敵わないのだ。とは言え韓国映画そのものの公開の熱がすっかり冷めてしまった昨今は、「シークレット・サンシャイン」も「渇き」も「義兄弟」もと、公開作はなんとかあるものの、見ていない。

そうこうしている間に、韓国エンタメ界も世代交代の兆しを見せ(もしかしたら日本の方が凄い人気なのかもしれない)、チャン・グンソクというニュー・アイドルが登場した。演技的には未知数のグンちゃんではあるが、主演映画は出来る。それが「きみはペット」だ。いわゆる韓流恋愛映画の王道の作品で、もっと見てられないかな、と思ったが、意外や見られました。ファンに向けてのアイドル映画はこれでイイのでしょう。でもアイドル俳優だったウォン・ビンが「母なる証明」で、見事な俳優に変貌を遂げたように、グンちゃんもなれるかどうかは未定ですな。一方、ガンホさんにも新作があり、それがまた新しいガンホさんの魅力を見せてくれた作品で、嬉しくなってしまった。

それが「青い塩」という作品。裏の世界から足を洗って、レストランを開店しようと料理教室へ通う元ヤクザの幹部(ガンホ)。その男を狙う女スナイパーは孤独な少女。二人は同じ料理教室で出会い、お互いを必要とする関係になりながらも、暗殺者と標的という立場にだった。元ネタは(うまいことヒネってあるが)高倉健主演の東映作品「冬の華」だろう。あの映画は健さんが、足長おじさんとして、かつて殺した男の娘を援助するというものだったが、その娘を暗殺者にして、主人公と皮肉な接点を設ければ、この「青い塩」になるという訳だ。

韓国映画にいつも感心することは、全世界の映画(特にハリウッド)の良いとこ取りを、常に模索しているところだろう。少し前に公開された「第7坑区」のような大味なモンスターパニック映画にしても、「エイリアン」「リバイアサン」のような密室での怪物との戦いのパターンで、そう「トレマーズ」の海洋版と言うべきテイストで“けっこう楽しめる”作品にして、ちゃんと観客目線で製作しているところだ。ここら辺が実は日本映画が忘れがちな点。

ガンホは、この映画でカッコいい格闘シーンを見せる。組織が送り込んだ複数のチンピラヤクザとの、室内での格闘シーンは見事な迫力。こんなに暴れるガンホ映画って他にあるのだろうか?このアクションシーンと共に、この映画の成功のもう一つの要因は、ガンホさんを兄貴と慕う弟分の若者(役者の名前はチョン・ジョンミョン)が魅力的に描かれているところ。ここに任侠映画の基本を再認識させられるのだ。そして女スナイパーのボーイッシュな女優さんに誰しも注目することだろう。その名はシン・セギョン!憶えておこう!

グンちゃんも「きみはペット」の中で見せるダンスシーンで、体のキレはあるのが充分に分かる。こりゃ、もう一段ステップアップするには、アクション映画に挑戦するしかないでしょ!