「パーフェクト・センス」の秀逸なアイディアに関心!

スティーブン・ソダーバーグの「コンティジョン」は見逃したが、この「パーフェクト・センス」もそうだが、ウィルスに襲われた世界を描いた映画が多いという印象がある。たしか「ブラインドネス」とかいう作品もあったよな。しかし、「パーフェクト〜」がユニークなのは、そのウィルスを医学の力で何とかするとかではなく、淡々とまず、こういう症状が襲う、次の症状はこうであるという人類が諦めている時点から物語が始まるというところだ。人間に必要な五感が次々と失われていくという、見方によってはホラー映画ということもできる。

今更ながらだが、五感とは味覚、嗅覚、聴覚、視覚、触覚のこと。レストランのシェフでありながら、ユアン・マクレガー演じる主人公は嗅覚を、次に味覚を奪われる。お客様も味覚がないのにレストランで食事をしようとする世界が凄い。そうして人間の五感がウィルスに奪われていくと人間はどうなるか?がこの映画のテーマでもある。この映画はそこにラブストーリーと混ぜ、感覚を失いたくない人間たちは、セックスに没頭するようになるという展開を見せてくれるのである。

残された聴覚で相手の声を聞きたい。残された視覚で相手の裸を見たい。相手に触れる感触がやがて失われていくのが分かっているかのように、マイケル(ユアン)とスーザン(エヴァ・グリーン)は、お互いの肉体を求めるのだった。この人類が最後を迎えようとすると人間は本能的に目覚め、子孫を残そうとするのか?快楽を求めようとするのか?という感じの結構壮大なテーマも含んでいるのだ。

見どころは、何と言っても美しいエヴァの裸で、ユアンと激しいラブ・シーンを披露しているのだ。彼女は2003年、22歳のときにベルナルド・ベルトルッチの「ドリーマーズ」でデビューしたが、その大胆な艶技で話題になったが、その時の裸の方が若々しいのは当然であるが、現在31歳のエヴァの裸のほうが『女』を感じさせ、圧倒的に素晴らしい。母親の女優マルレーヌ・ジョベールは貧乳の女優と記憶するが、エヴァの豊かな乳房は良い意味で母のDNAは受け継がなかったようだ。

彼女は2006年のダニエル・クレイグの「007 カジノ・ロワイヤル」に出てボンド・ガールとなったが、作品そのものが好きではないので、彼女の役もあまり記憶にない。この先の出演作に「ダーク・シャドウ」がある。今年の5月封切りのティム・バートンの新作で、ジョニー・デップ主演のヴァンパイア・ムービーとのこと。着実にキャリアを積んでいる。金髪ではないが大変な好印象だ。またユアンもビッグ・バジェットの作品とインディペンデント映画の間も見事に行き来していて、非常にユニークな存在になってきた。

2011年キネマ旬報ベストワンの「ゴーストライター」の主演が一番大きな話題だが、あれはやはりポランスキーの映画であって、ユアンだけに限れば、この映画の役の方が好みだなぁ。ユアンは結構大胆な演技もしていて、この映画の監督であるデヴィッド・マッケンジーの「猟人日記」なんかもあったが、今年「マリリン 7日間の恋」でオスカーを狙っているミシェル・ウィリアムズ相手に「ブローン・アパート」(2008年の映画)でも裸で絡んでいたぞ。まぁ、もっと凄かったのが「フィリップ、きみを愛してる!」だけどね。と言いながら、あの「トレインスポッティング」から早16年だ。あの時のユアンはトンガっていたなぁ。こっちも年取る訳だよねぇ。

それより問題は、この映画の監督デヴィッド・マッケンジーだ!もっと要チェックの監督だったのにスルーしていた。アシュトン・カッチャー主演の「愛とセックスとセレブリティ」の監督ではないか!ほんのちょっと(多分新宿シネマート?)だけ公開されたが、見逃してしまったのだ。この監督は今後しっかりと追いかけていく価値がありますね。鮮やかなラストシーンでした!