「闇金ウシジマくん」は萬田銀次郎を目指すのか?

女優では竹内結子柴崎コウ、男優では売れっ子になった岡田将生など、多くの俳優を抱えるプロダクション、スターダスト・プロモーション。今や、この事務所の俳優なくしては映画もTVもキャスティングがままならないとまで言われる。その勢いに乗ってスターダストが映像に特化したレーベル(製作、幹事会社、配給、パッケージ販売)SDP=スターダスト・ピクチャーズを立ち上げ、ソフトビジネスにも参加したのは2009年あたりだったろうか?

「余名」「瞬またたき」「シロメ」「猿ロック」などが、配給及びパッケージ販売まで独占するコンテンツとなっているが、正直言って“当たったねぇ!”と言える感じはなかった。自社所属の俳優を起用して、試行錯誤しながら自社配給出来る(他のビッグ・バジェットは東宝配給になる)作品を生み出そうと頑張っていたのである。そして遂に「闇金ウシジマくん」という金脈を掘り当てたのだった!原作ファンも含め、新宿バルト9はけっこう入っていましたよ!

原作の漫画は知らなかった。深夜に何気に見たTBSで突然映し出された、風俗嬢に返済を迫る場面に目が釘付けになり、その毒っけ満点の映像と展開に魅入られてしまったのだった。もともと山田孝之という俳優に対し「クローズZERO」から“何か変わった!、今まで無理して優等生演じてたの?”と感じていたので、この丑嶋馨というキャラクターが、とても合っていると思ったのだ。後で聞いて知ったが、原作ではかなり過激な描写があるとのことだが、深夜といってもTVであることには変わりないので、その辺はほどよく控えてあり、バランスはちょうど良い。

とは言え、毎週の放送を全部見たわけではなく、TV版がどうのこうのとは言えない。そのキャラクターが気に入っただけと言った方が正解か?よって、今回の映画化が密かな楽しみであった。物語が原作漫画からとられたのか、オリジナルかは知らないが、一言で言えば面白くできている。林建都扮する渋谷に拠点にするイベント仕掛けて成り上がりたいが金はない若者(キャラクターは林君には珍しいチャラ男)対ウシジマ君と、サイドストーリーで大島優子扮する目的を持たない今どき娘の成長という2つの話の面白さ。

ラストに『闇金は犯罪です』とテロップに出るように、犯罪行為ということを知ったチャラ男君が、女の子を使って借りた金を返さず、取り立てに来たところを警察に知らせ、ウシジマ君が逮捕されるという展開が面白い。その取り調べをする刑事を演じているのが古舘完治という絶妙なキャスティングだ。そして、この映画で最も魅力的な登場人物は新井浩文が演じた殺人鬼!最初は新井君だと分からなかったぐらいのキャラとなっていて「アウトレイジ ビヨンド」のチンピラどころの騒ぎじゃないぞ!

他にも大島優子のどうしようもない母親役に黒沢あすか。借金返済のために娘に『あんた3Pしてくんない』と一緒に売春を持ちかける母親役をリアルに演じられるなんて、さすが黒沢さん!ビッグ・バジェットの作品でなくても、ちゃんと目配せ出来ているキャスティングの映画は、それだけでも見応えがあるのだ。

さて、金融漫画からの映画化作品となると、どうしても比較されるのが「難波金融伝・ミナミの帝王」ということになる。大阪ミナミで闇金萬田金融』をやっている萬田銀次郎が主人公で、やはり返済は厳しい。しかし、借した相手が更なる悪に騙され返済不能になったりしたら、そこは大阪人情で銀次郎が返済も含め悪と対決する。要するに「ミナミ〜」の方が浪花節テイストで、ウエットに対して「〜ウシジマくん」の方がクールでハードというところか。

同じ闇金の世界を描き、原作の漫画からの映画化のネタはあるのだとしたら、ウシジマくんは萬田銀次郎になれる可能性があるぞ!丑嶋馨の役は山田孝之以外は考えられないので彼次第だが、SDPとしてもこの映画の成功は放っておいてはならない。すぐに続編を作るべきでしょう。というか1年1作のシリーズ化にチャレンジしてみてくれませんか?