アメコミ映画、百花繚乱!

アメリカ映画のブロックバスター作品の主流が、アメコミからの映画化作品になったのは、いつぐらいからだろう。ティム・バートンが「バットマン」を作ったあたりでは、まだ「バットマン」は「バットマン」というアクション映画であり、『アメコミ映画』というジャンルとしては確立されていなかったと思う。しかしマーベルが権利ビジネスだけでなく、本格的に映画製作に参加するようになってから、ひとつのジャンルとして語られるようになったと記憶する。

もちろんサム・ライミが作る以前の77年の「スパイダーマン」The Amazing Spider-Man もなぜか池袋文芸座で見ている(ほとんど憶えていないが)ので、映画化作品は結構な割合で見ているが、はっきり『アメリカの漫画の映画化なんだ』と意識したのが、79年に日本公開されたクリストファー・リーブ版の「スーパーマン」からだろう。とは言え、それはSFアクション大作として楽しんだのであり、現在の「バットマン」に対する接し方とは明らかに異なっていた。

当然、映画の元となる原作がマーベルかDCか、なんて知る由もなく、正義の味方のHEROものひと括りだった。ここが出発点ともなると、やはり(「キック・アス」はそれを茶化した)スーパーHEROこそがアメコミという捉え方をしてしまうので、最近の自分のダークサイドに思い悩む主人公系のものは、どうにも性にあわないのである。それが物語に深みを与えていると、熱く語るアメコミファンもいるが、こちらとしては単純に楽しませてもらえば、それでいいや。

この夏も「マイティ・ソー」「X-MENファースト・ジェネレーション」「グリーン・ランタン」と立て続けに公開だ。見た順はバラバラだが、面白かった順番はこのとおりだな。と言いながら「〜ソー」の事は何も知らなかった。そこが良かったのかもしれないが、神の国の暴れん坊王子様という設定が気に入った。

そのやんちゃ坊主ぶりに父である王が『修行してこい!』とばかり、パワーを無くされて、人間世界に降ろされ(ここからが青春映画だ!)人間と接することによって成長するという、王道の展開。まあ、これを神から妖怪に置き換えれば(予告編でしか見てないが)そのまま「豆富小僧」に当てはまってしまう、いわゆるパターンではあるが…。

ソーの両親に扮するのがアンソニー・ホプキンス(あぁ、定番!)とレネ・ルッソ(お懐かしい!)の二人。人間界で愛するようになるのがナタリー・ポートマン。彼女のメジャー・スタジオ作品とインディーズ作品の使い分けは、見事なバランス感覚だ。浅野忠信もこんなに台詞があるとは思わなかった。彼に付いたヘアメイクさんは、「インセプション」の時の渡辺謙にも付いた同じ人だと、謙さんから直接聞いてしまった。ハリウッド村、横でつながっていますなぁ。

マーベルのHERO軍団は最終的に『アベンジャーズ』に集結(と全部、友人のK氏から教わった)する関係から、楽屋オチがあり楽しい。今回も鉄の怪物が出てきた時の“スタークのところの奴か?”といった様な台詞があり、大笑いだった。「アイアンマン」ちゃんと見ててよかったな。

監督がケネス・ブラナーと最初に聞いたときには、誰しも『?』だったろう。だってシェイクスピア役者とアメコミと結びつかないでしょ。ところが神の国のシーンは、映像そのものの凄さもあるが、その雰囲気は、まるで父と息子の関係も含めて、「ハムレット」か「リア王」かと言ったところの、シェイクスピアそのものではないか!そう、監督はケネスで正解だったんですね。

「X〜」はアメコミ得意のビギンズもの。原題は「ファースト・クラス」だ。マグニートとプロフェッサーXの若き日が描かれるが、同じ頃に違う場所で産まれた二人が、全く違う生活環境を経て、運命的な出会いをする展開は、まるでジェフリー・アーチャーのベストセラー「ケインとアベル」。その部分に重点を置いた前半がお気に入り。

マグニートとプロフェッサーXの二人の、現在の年齢から逆算したのだろうが、2次大戦のホロコーストから、米ソ冷戦のキューバ危機を盛り込んだアイディアが素晴らしい。御贔屓若手男優ジェームズ・マカヴォイが、プロフェッサーXとなって行く過程から、なぜ車椅子の生活になったかが明らかになり、腑に落ちましたね。

俳優はマカヴォイだけかと思いきや、ケビン・ベーコンが楽しそうに悪役やっていたり、あの鉄の爪男もちゃんと出てきてくれて見所満載だったが、結局は若手のジェニファー・ローレンスと、金髪悪女のジャニアリー・ジョーンズに目を奪われましたね。という作品評価の割には、お客は入っていないようで、こうなると日本ではなんのアメコミでもヒットは難しいですね。要するにカルチャーの違いだから仕方がないのですよ。

ところが「グリーン〜」は、アメリカでも不人気と聞く。直接製作費で2億ドルも掛け、見事に転けたようで。なるほど、こうなるると知名度やカルチャーの問題ではなく、ちゃんと出来が問われていたことになる。ひとつだけ面白かったのは、DCコミックスのHEROは、恋人と空を飛ぶというお約束事があったのだということ。そして“貴方は誰?”という展開であるが、「グリーン〜」でびっくりするのは、それを最初から隠そうとしないこと。でも困ったことに主演のライアン・レイノルズって、グリーンのアイマスクをすると、ウィル・フェレルにそっくりになってしまうのだ。これでは、どうしても見ていて笑ってしまうではないか。映画はいかにも「2」の予感があるラストだったが、まぁ無理でしょう。

と、なんだかんだ言いながら、アメコミ映画を楽しんでいる自分がいることも事実だ。さぁ、次は「キャプテン・アメリカ」に期待しよう!