「ホタルノヒカリ」の映画化は成功したのか?

今年の公開でファイナルとなる「踊る大捜査線」の映画化は、現在のTVドラマからの映画化の流れの、先駆者的存在と言って差し支えないだろう。確かに国民映画「男はつらいよ」だってTVドラマから出発した映画作品と言えなくないが、それはあくまで偶発的な映画化であり、いわゆる局の仕掛けの上に成立したものではなかった。そうした意味で言うと、やはり出発点は「踊る」なのである。

「踊る」の成功はTV各局の映画製作部門を大いに刺激したことだろう。結果としてTBSからのヒット作は「ROOKIES」、テレビ朝日からは「相棒」、テレ東からは「モテキ」などが登場した。失敗作も含めれば、「踊る」以降どれだけのTVドラマからの映画化作品が出来たことだろうか。その要因は、今の映画は作品の知名度がすでに『有る』ということが、企画の第一優先事項だからである。それはハリウッドも同様で、続編、リメイクだらけで、更に日本ほどではないが「グリーン・ホーネット」や「ダーク・シャドウ」のように往年のTVドラマからの映画化も加わってくる。

ホタルノヒカリ」は2007年にファーストシーズンが放送された日本テレビ作品だ。この映画化がチャレンジングに映るのは、「2」(2010年)オンエア終了後から、かなりの時間が経っての映画化だからである。普通、今の映画化作品ならオンエア終了時に“映画化決定!”と連動展開して露出を継続していくのが定石であるのに、「ホタルノヒカリ」は丸2年の空白期間がある訳だ。だが結果として女性を中心とした視聴者層は、このTVドラマの干物女を忘れていなかったのである。

TVドラマそのものを見ていなかったので何とも言えないが、おそらくこの映画の内容で、TVからのファンはOKなのだろう。確かに日本映画には珍しいほどの王道の『ラブコメ』で、こうした直球で良いのだろう。仕事はきちんとするが、家ではひたすらゴロゴロの干物女、雨宮蛍と『ぶっちょう〜』さん(藤木直人)との恋物語で、「2」で無事結婚して、今回の映画化で新婚旅行と称してローマ行きという物語(だろう、多分)。唯一、映画版で残念なのは、昼間のちゃんと仕事する雨宮が(TV版見てなかったから、よけいに)あまり描かれななかったこと。その夜とのギャップで、もっと笑いたかった。

この成功は、もしかしたら今後のTVドラマの映画化の在り方に、変化をもたらすかもしれない。各局の『忘れられていないドラマ』の映画化にチャレンジさせるかも、だ。要するに最近のTVドラマの中に、映画化に向かえるような骨格のある作品がないため、過去の遺産的題材でチャレンジしたら、見事な金脈を掘り当てたということになり、他にはそういった作品はないかどうか確認を始めるのではないかと予想するのである。個人的にはTBSの木村拓哉主演の「グッドラック」、もしくはフジの「ビーチ・ボーイズ」(共にちょっと古すぎか?)あたりが思い浮かぶのであるが…。

それにしても綾瀬はるかである。これほどの好感度を有する女優は、現在のところ他には見当たらない。男からだけでなく、女子からも人気があるといういうのが、この映画を見ているとよく分かる。要するに『ぶっちょう』でなくても“おバカでも、グータラでも許してしまう”オーラを持っているのだ。これでは来年の大河ドラマも彼女に頼らざるを得ないのも、なんか分かる気がするなぁ。

8月25日封切りの高倉健主演の「あなたへ」、9月1日封切りの「ひみつのアッコちゃん」と、あと2本出演映画がやって来る。多分、来年は大河にかかりきりで、映画はないだろうから、この2本で綾瀬はるかを楽しんでおくことにしよう!