「メリダとおそろしの森」は日本人には向かないのだろうか?

ピクサーとしては前作「カーズ2」は大失敗の判断をしてるでしょう。それは全世界の興行成績とか言うものではなく、作品のクオリティという部分での失敗であり、最もピクサーが嫌がる部分とも言えますね。そうした安易なシリーズ物を作ってしまった反省からか、今年の新作は「メリダとおそろしの森」というオリジナル作品でした。

ところが残念ながら、日本での興行成績はまったく振るわず、ディズニー側の期待を大きく下回ったとのこと。その要因は何であろう?知名度のあるシリーズものでなかったから?「〜おそろしの森」とした邦題に、子供が怖がってしまったから?日本語吹き替え版の主役がAKB48大島優子さんだったから?それらも要因のひとつでしょうが、個人的には物語の設定が大昔のスコットランドだったことが大きかったのでは、と思っています。

この手のお伽噺は“昔々、ある所の、お姫様で…”が基本でしょう。そうした設定の曖昧な部分が必要なのに、この映画はあまりにも日本人に馴染みがない、中世スコットランドの設定と言い切ってしまっていることが、敬遠された大きな要因だと思うのです。よって、子供には無理(だって若いお母さんも知らない、興味ない!)となってはいませんか?

だとしたら、ターゲットを大人に絞ってはどうか、となりますが『ディズニー/ピクサー』という、すでにファミリー向けとして出来上がったブランドでは無理というもの。興行的結果は最初から分かっていたのですよ。しかし、作品をちゃんと見た観客からは賞賛の声があるのも確かです。そして映画的に見ても、その技術的クオリティに驚かされました!「タンタンの冒険」のキャメラワークも凄かったが、それ以上でしょう!

そもそもアニメーションに元来なかった、キャメラワークを登場させたのがディズニーの「美女と野獣」でした。2Dの手描きのアニメでは表現が出来なかった、キャメラが登場人物の向こうに回り込む手法をCGを取り入れ「美女〜」で成功させたのです。そこからアニメでも奥行のある構図が作られるようになり、「タンタン〜」で見られた登場人物にまとわりつく様なキャメラの動きに発展していったのです。

そのキャメラワークの究極の動きが「メリダ」で見られ驚かされます。ロングショットからアップまでのワンカットから、横移動から縦移動までと、様々なキャメラワークでキャラクター造形を除けば、アニメとは全く感じない映像ばかりです(実はそこに好き嫌いもあるのですが)。

しかし、技術的な面を抜きの、内容としても充分満足の出来で、ピクサー初のお姫様を楽しみました。活発なお姫様の設定は、やはりジブリの影響を感じてしまうが、実はこれ「ローマの休日」なのですよ。お城を抜け出したい王女がローマの街に抜け出すか、森に逃げ込むかの違いで、成長を遂げた王女が自覚に目覚めお城へ戻って行くのです。そう、メリダはアン王女だったのです!

基本的には字幕で見たいのですが、今回は仕方なく日本語吹き替え版でした。しかし、大島さんの吹き替えは悪くなかったですよ!