小林旭と言えば…

男たちの挽歌」を崇拝している映画ファンは回りにもかなりいる。その彼らが一場面ごとに熱く語る様には、当時から(若干今でも)香港映画にどうにも馴染めなかった側の人間は、傍観するしかないのだ。しかし、その監督をした(彼らの中では「レッドクリフ」の監督じゃないようで)ジョン・ウー小林旭を大好きだとなるとなると話は違ってくる。俄然こちらもジョン・ウーが気になり出すから不思議なもので、果たしてどの時代の旭さんが好きなのだろうか?などと思ってしまう。

日本映画の黄金期にあって、石原裕次郎と共に日活の看板を背負っていた時代、裕次郎大鵬とするなら旭は柏戸(古い例えだなぁ、スイマセン!)だろうか?しかしながら、その日活時代の作品は、残念ながらそれほど見れてはいない。「渡り鳥」シリーズ1、2本と「南国土佐を後にして」ぐらいか。何回か名画座系で「黒の賭博師」を追いかけていたのだが、未だ見れず仕舞だ。

ラピュタ阿佐ヶ谷で『東映実録路線中毒』と称して特集上映中(レイトショー)の1本「唐獅子警察」(1974年)を見る。なんてカッコイイ小林旭なんだ!と溜息が出た。ヤクザの若頭役がなんて似合うんだ!サングラス姿がシブイぜ!そう、実は(ジョン・ウー監督はどちらか好きか知らないが)個人的には東映時代の旭さんが大好きなのである。

そもそも60年代後半から日活が経営不振に陥り、映画製作がままならなくなり、多くの俳優が日活を離れた。旭さんも72年に東映に入り、さっそく「仁義なき戦い」の3作目「〜代理戦争」の武田明役で人気再燃となる。多くの「仁義なき〜」ファンがシリーズの中で、最も好きな1本に「代理戦争」を挙げるのは、この武田明というキャラクターが登場したから。1作目と「広島死闘編」には出ていない。まさにこの役をやるために東映に移籍してきたとしか思えないはまり役なのだ!

唐獅子警察」はその小林旭扮する(武田明的キャラクター)のヤクザの若頭と渡瀬恒彦扮する(渡哲也が演じた「仁義の墓場」の石川力夫的キャラクター)腹違いの兄弟のヤクザの宿命の対決の物語だ。タイトルに警察は付いているが、どこにも警察なんて出てこず、ひたすらヤクザの縄張り争いの抗争劇だ。同名の劇画の映画化とのことだが、脚本の野上龍雄は原作を完全に無視してしまったとのこと。監督の中島貞夫とのコンビは他にも「脱獄 広島殺人囚」「暴力金脈」などが、この特集上映でもかかるほど、その弾けぶりの面白さたっぷりのコンビだ。

結局、日活時代をそうは見てこなかったので、自分の中で小林旭と言えば、東映の実録ヤクザ映画のスターということになる。この東映での活躍後、歌手としての人気が爆発するが、あくまで好きなのは、この短い間の東映時代だなぁ。ジョン・ウーはたぶん無国籍アクション映画だった「渡り鳥」シリーズでの旭さんが好きなのだろうか…。