怪優、岸部一徳の魅力

岸辺一徳(実は勝手に一徳ちゃんと呼ばせてもらっている)を俳優として意識したのは、やはり「死の刺」からだろう。もちろん小学校でGSに出会っている世代なので(「ブルーシャトー」の替え歌で、もりとんかつ〜って言ってました)、タイガースに所属して“サリー”という愛称で呼ばれていたことも知っている。

しかし、そうして映画に出始めても、ショーケンに続いてGSからまた一人俳優に転向したのが一人いるなぁと思うぐらいだった。しかし実はこの俳優のある時は軽妙洒脱、ある時は重々しく、出番が少なくても画面に強い印象を残す演技を、多くの監督は放っておかなかった。

岡本喜八(「助太刀屋助六」よかったねぇ)、大林宣彦をはじめ、俳優仲間でもあるマキノ雅彦(「寝ずの番」で笑わせてくれました!)、滝田洋二郎緒方明(「いつか読書する日」と「のんちゃんのり弁」ともグッド!)そして最近では「必死剣鳥刺し」と「信さん」で立て続けに平山秀幸監督との仕事という充実ぶりだ。

十三人の刺客」の宿場町の庄屋のオヤジ役も、出番は少ないのに場面をさらってしまったではないか!実はあそこでこの映画だめだ、となってしまったのだ。要するに岸辺一徳という俳優は映画を生かす事も殺す事もできるのだ。

逆に映画を生かしたエピソードとしては、「ハッピーフライト」DVD発売時に矢口史靖監督にインタヴューする機会があり『あの岸部さんの役は「大空港」のジョージ・ケネディ(役名ジョー・パトローニ!)のイメージですか?』と質問してみた。すると即答で『いえ、「サブウェイ・パニック」のウォルター・マッソーです!』と。あの軽いけどここぞで頼りになる、という男の役柄は、一徳ちゃんならではで感心していただけに納得、納得であった。

そうした愛すべき怪優、岸部一徳の最近の当り役は「相棒」での小野田官房長役。ある種サブキャラのぶつかり合いでもある「相棒」シリーズ(サブキャラ米沢守でスピンオフ映画も出来てしまったことが証明していますよね)の中にあって、この杉下右京を最も理解しながら、権力側に立つ官房長であるが故に右京と対立する役は図抜けて魅力的だ!

そ、それなのに(進化する「相棒」シリーズはわかるけど)今回の映画版Ⅱでは、なんというラストを用意したのだ!ビックリしてしばし呆然であった。映画版Ⅲも出来そうなほど、今回の映画版も満足したのであるが…

この後、どうするのよ?「相棒」!