追悼、高峰秀子さん

正月休みにダラダラとドラマとバラエティものばかり見ていて、ろくにニュースを見ていなかった。よって本日になってよくやく、高峰秀子さんの死去を知り、大変驚いた次第だ。そして、これほど胸が痛くなるほどの哀悼の情が溢れ出したのにも、我ながら驚いてしまった。

それほど作品群をキチンと追いかけて見た女優さんではなかった。もちろん代表作である成瀬の「浮雲」や若き日の黒澤が助監督として高峰さんと出会った「馬」(もう、素晴らしいったらない!)は見ているが「カルメン」2部作も「二十四の瞳」も劇場では見てはいないのだ。「女の園」もTVで釘付けになったが映画館で見たものではなかった(残念!)

ではなぜ、これほどまでに彼女の死がズシンと応えたのか?それはまさに今年こそ高峰秀子という女優の作品群を追いかけようと思っていたからだ。それは去年、図書館で借りて、なにげなく読んだ彼女の自伝『わたしの渡世日記』が目が飛び出るほど面白かったからだ。

黒澤監督との恋、東宝争議、新東宝設立、助監督松山善三との出会いと結婚、木下監督と成瀬監督の主演作の数々のことなど、見事な文体で語られ、いわゆる時代(ある部分の日本映画史ですよ!)の証言ともなっていて本当に面白い。さらにキネマ旬報誌に掲載されたロングインタヴュー記事(斉藤明美さんの力量でもありますが)も魅力的であったことが大きな要因といえるだろう。すなわちこれだけ魅力的な人間なのだから、その出演作品をちゃんと見ておかねばならないと決めたのだ。

そんな矢先にお亡くなりになってしまうなんて…。

幸か不幸か(こういう言い方でいいのでしょうか)現在、銀座シネパトスで特集上映されている《昭和の名優・小林桂樹を偲ぶ》でも必然的に高峰さんの出演作でもあるので上映されているではないか!

嗚呼、見なければ!作品をみることが追悼です!!