「アザーガイズ 俺たち踊るパイパー刑事!」は正統的バディ・ムービーだ!

刑事2人組が活躍する映画をバディ・ムービーと言い始めたのはいつぐらいだったろうか?代表作である「リーサル・ウェポン」の後であることは間違いなかろう。70年代の伝説の刑事アクション「破壊!」の頃は言っていなかったよなぁ。刑事2人ではないが「48時間」もバディ・ムービーだが、そこでも言っていた記憶がない。多分、デ・ニーロの痛快作「ミッドナイト・ラン」あたりかもしれないぞ。イーストウッドには「ルーキー」や「シティ・ヒート」があり、スタローンには「デッド・フォール」があるという具合に、アクション映画俳優にはバディ・ムービーが付きものだな。

ともあれ、今では間もなく公開される日本映画「DOG×POLICEドッグ・ポリス 純白の絆」でも犬に向かって『お前は俺のバディだぜ』とか言っているし、「海猿」でも普通に2人組みのことの用語として使われて、一般認知は広まった感じだ。下手したら若い人に黒澤明の「野良犬」を見せたら『あぁ、バディ・ムービーだね』なんて言いそうな時代である。そんな中、本家のアメリカ映画から久々の本格的バディ・ムービーがやって来た。ウィル・フェレルマーク・ウォールバーグの「アザーガイズ 俺たち踊るパイパー刑事<デカ>!」だ。

舞台はニューヨーク。冒頭より街中での過激なカーチェイス&銃撃戦が展開される。2人の刑事が悪人退治をしているのだ。この大掛かりなスタント場面だけで、この映画がハリウッドで一流のスタッフが投入された、ビッグ・バジェットものだと分かる。その2人の刑事とはハイスミスとダンソン、演じるはマッチョな刑事を演じさせたら右の出るものがいない、サミュエル・L・ジャクソンドウェイン・ジョンソンだ。

2人はNY市警のスーパー刑事で、街のヒーローだ。犯人逮捕にはいつもハイテンション、街をぶっ壊しながらの逮捕であろうとお構いなしのところが痛快だ。でも、結局そのテンションのまま、ビルの屋上から二人で飛び降り(下を走っている悪人を捕まえようと)殉死という爆笑な導入部。この場面、誰が見ても「リーサル・ウェポン」のリッグスがビルから飛び降りる場面を連想するだろう。ここだけの出番だけで二人を、さらに上司役でマイケル・キートンがキャスティング、なんて贅沢な映画なんだ!

すると警察内部には殉死の二人に代わって、誰がヒーロー刑事になるかという闘争が生まれるが、実はすべて“その他大勢”なのだった。特に絶対と言えるほど、そのヒーローにはなれない刑事2人がいた。ウィル・フェレルマーク・ウォールバーグ演じるアレンとテリーだ。アレンは会計課出身の刑事のため、事件の現場よりデスクワークが得意(このギャップが笑える!)。一方テリーはかつてヤンキースタジアムの警備にあたり、あのデレク・ジーター(本人出演、凄い!!これぞアメリカ映画の特別出演!)を誤認逮捕という大失態を演じてからは、干されっぱなし。この二人がコンビで巨額の金融詐欺事件の捜査でヒーローになるという痛快作だ。

そうは言ってもウィル・フェレル映画の基本である下ネタギャグは健在。その担当はアレンの奥さんシーラ役で登場するエヴァ・メンデス、エロい!マッチョでもなんでもないアレンなのに、奥さんをはじめ次々に登場する女性に、モテまくるというウィル得意の設定だ。相棒のテリーは奥さんのシーラを見て、その夫婦という組み合わせに不思議がり、羨ましくてたまらないという大爆笑の展開。マーク・ウォールバーグは、コレっっていう個性はないのだが、「ザ・ファイター」もやれば、こんなファニーな役をやる、意外と侮れない俳優だぞ!

監督のアダム・マッケイの名前は知名度はない。何故ならウィルとのコンビ作「俺たちニュースキャスター」「タラデガ・ナイト オーバルの狼」「俺たちステップ・ブラザース 義兄弟」がすべて未公開に終わっているからだ。というよりウィルの主演作で公開されたのが「俺たちフィギュア・スケーター」と「主人公は僕だった」ぐらいなんだから仕方ないか。でも、この監督のコメディセンスは追っかけておいたほうがいいぞ!

ヘタレな2人が頑張り、最後にはヒーローとなるパターンはアメリカ映画の王道だが、配役の妙と変化の付け方で、見せ方に工夫をすれば、まだまだ面白くなるんだという見本のようなコメディ・アクション映画。そして、なにより正統的バディ・ムービーであることが嬉しかった!