「メカニック」はジェイソン・ステイサムの面目躍如!

実は「トランスポーター」を見ていない。現代のアクション映画俳優の代名詞とも言うべきジェイソン・ステイサムの代表作を未見のまま(「2」「3」は見ている)語るのはおこがましい。しかし、「エクスペンダブルズ」などを見てみると、やはりアクション映画はジェイソン中心で回っているのだと感じ、更に新作「メカニック」での、その面目躍如ぶりが見事だったので、書きたくなってしまった。まあ、ひとつ前に公開された「ロシアン・ルーレット」の彼にガッカリしたので余計にそう思った部分もあるが…。

でもジェイソンの「メカニック」の前に、このリメイクの元になった我らがチャールズ・ブロンソンの「メカニック」について少しだけ。監督は70年代映画を通過する時には、避けては通れないマイケル・ウィナーブロンソンとは快作「狼よさらば」を始め「チャトズ・ランド」「シンジケート」などの名コンビの監督だ。アクション映画監督というカテゴリーになってしまうが、劇場未公開(残念!)の「大いなる眠り」ではレイモンド・チャンドラーに挑戦、「さらば愛しき女よ」に続くロバート・ミッチャムフィリップ・マーロウものも監督しているという才人だ。

物語のプロットはリメイクとほとんど一緒だが、相棒となる若造に扮したのがブロンソン版では、あのジャン=マイケル・ヴィンセント。ここは大きく印象が異なる部分。でも、もしかしたらその後のジャン=マイケルの活躍の印象で、自分のイメージが出来上がってしまっているかもしれない。要するに70年代の、大きくいえば社会に対してだが“大人に対し反抗、反撥する”魅力的な若造役を演じさせたら彼の右に出るものはいないのだ。

しかし「メカニック」では、そのイメージの確立はまだなく、75年の「弾丸を噛め」(対抗するはジーン・ハックマン)が決定打か?「グレート・スタントマン」での相手はバート・レイノルズ。ねっ、相手は大人でしょ。TVの「エア・ウルフ」ではアーネスト・ボーグナインでっせ!こうしてジャン=マイケルのイメージは出来てしまったかもしれない。しかし、やはり彼が70年代の若者の代表であったことは「ビッグ・ウェンズデー」のマット・ジョンソン役が証明しているなぁ。「ビッグ〜」の冒頭10分は何度見ても惚れ惚れする。

ジェイソン版「メカニック」に話を戻そう。今回の相棒役は「3時10分、決断の時」の好演が印象的だったベン・フォスター。なんか殺し屋になれないチンピラ(だからスマートに殺せない)という部分の方が強く出ていて、こんな若造をどうしてジェイソンがお守りをしてやらねばならんのか、と思ってしまうのが、この映画の弱い部分だ。しかし、それ以外のラストも含むジェイソンのヒットマンぶりは納得である。ストイックでクール、女には優しく(しかし安心出来ると判断した、黄金のハートを持った娼婦だけ)、それでいて溺れない。

そもそもデビューしたての頃の「ロック、ストック&スモーキング・バレルズ」や「スナッチ」の類の映画はちっとも見る気がおきなかったので、ジェイソンをはっきり認識したのは「ミニミニ大作戦」だ。その時の印象は“悪役顔なのに、こういう奴を味方に付けると心強いタイプだなぁ”だった。その後も、印象通りの役柄一直線のところにも好印象を持っている。80年代アクション俳優が(誰とは言わない)アクションだけではないところを見せたがり、コメディに出演して『なんだかなぁ?』と思わせたのとは違って、きっちりと王道のアクション映画に向かってくれている。

まぁ、ジェイソンは女に対する部分とかで、最初からユーモアセンスを発揮しているので、大袈裟にコメディをせずとも(「アドレナリン」などは、○○のシーンも含めアクション・コメディかもね)その魅力はすでにアリなのだろう。対抗するドゥエイン・ジョンソンは、コメディで成功してしまった分、アクション映画に戻った「ファースター」を見てみても、違和感が先行してしまった。お説教臭い復讐劇の内容がドゥエインに合わなかった部分もあったが…。但し「ワイルド・スピードMEGAMAX」の彼は素晴らしかった!!

まもなく公開のジェイソンの新作「ブリッツ」はスリラーとのことだが、また別な魅力を見せつつ、王道一直線で楽しませて欲しいものだ。