閉館前の浅草中映で洋画2本立て

シネコンで映画を見慣れている若者たちは、浅草で映画を見たことがおそらく無いであろう。かつては映画興行のメッカとして知られた浅草六区の映画館も、この10月21日(日)をもって全て閉館と相成った。まぁ、自分が高校生の頃から(37年前か?)すでに興行的に活況を程しているとは言い難く、いささか入り込むのに『恐怖』を感じるほど寂れた状態であった。

高校生時代に浅草に入り込んだ要因も、たまたまタダ券が手に入っただけのことだが、それでも、電気館だったか(館名はすべて定かでない)で、若き日のチャーチルを描いた「戦争と冒険」(封切はテアトル東京だったが見逃していた)、東映系の封切り(多分)で「県警対組織暴力」、泉谷しげるという役者にビックリした「野獣刑事(デカ)」などの一般作から、オークラ映画(いわゆるピンクです、高校生で見てました!)までと楽しみ、社会人になってからの正月でも、会社をさぼって「トラック野郎」の第何作目かを見たりした。

洋画の2本立て興行の浅草中映で、見逃していた「タイタンの逆襲」と「コナン・ザ・バーバリアン」という絶好の番組をやっていたので、別れを惜しみつつ駆けつける。肩の力を抜いて楽しめる洋画のアクション作と、浅草という土地の絶妙なバランスだ。こうした一軒家の映画館は減る一方だなぁと、外観も目に焼き付けたのは言うまでもない。そして入り口で“本当に来週でお終いなの?”と問いかける常連さん多数の場面を確認し場内へ。もちろん観客に女子は一人も居なかった。

映写そのものは問題なく、建物の老朽化という部分を除けば、閉館するような感じはまったくしなかった。むしろシネコンの興行でよく見る観客片手未満より入っていたではないか!もちろんデジタル上映ではなく、ちゃんと映写機が回っていて、久しぶりに客席側から映写機を繁繁と眺めてしまった。もちろん「タイタン〜」も「コナン」も当然ながら2D版だった。

レイ・ハリーハウゼン版の「タイタンの戦い」には続編はない。要するにリメイク版の「戦い」の無理やりの続編で、相変わらず仲の悪い神様同士の喧嘩に半分人間、半分神様のペルセウス(万能の神ゼウスの息子)が巻き込まれて大騒ぎというお話。これでもかというばかりの特撮映像の羅列をニコニコして見ていたら、キャストに意識がいかなくなってしまっているのに気がついた。

それがゼウス役のリアム・ニーソンとハデス役のレイフ・ファインズの共演。そう、二人で力を合わせて戦っているが、二人は「シンドラーのリスト」で対敵した関係じゃないか!なんか時の流れを感じ、感慨深いものがあるぞ。特にリアムは最近、マスター(王様、将軍などなど)系の役ばっかりで、いささか食傷気味。だから「96時間」が新鮮(「2」も期待!)に映ったのかな?

もう1本の「コナン〜」は、かのアーノルド・シュワルツェネッガー作品で有名となった「コナン」シリーズのリブート(リメイクではなく、『再起動』というそうな)作品。ミレニウム・ピクチャー製作、日本での配給は日活と、前作の権利が現在20世紀フォックスにあるのに、まったく絡まないという不思議な展開となっている。まぁ、シュワルツェネッガーのイメージが強いので、その部分さえ意識しなかったら、このアクションは楽しめますよ。

ご贔屓の俳優のひとりロン・パールマンがコナンの父親である“未開人族(これをバーバリアン族という)”の長の役で出ている。こういうキャスティングに喜ぶのが映画ファンの特権だ。その父を魔術を使い世界征服を目論む王様に殺され、成長したコナンがその復讐を果たすという単純明快なストーリー。悪役で台詞もなく、大きな体を使ったアクションを披露し、コナンと闘う役者の顔、どっかで見たことあるなぁと思ったら、なんと、あのボブ・サップでした。まだ俳優やれてるんだ!!

実はよく見れば、この手の単純な中世モノ風肉体系アクション映画が少なくなっているのだ。だから、この「コナン」には全世界的に成功して欲しかったが、残念ながらそうは問屋が卸してくれなかったなぁ…。

とにかく、浅草中映でこの2本立ては、映画館(こやと読む!)と作品が見事にマッチして、忘れられない映画になりました!浅草中映さん、どうも有難うございました!