コリン・ファレル主演の「トータル・リコール」の主役は?

余りにも、元気が良かった頃のカロルコのイメージと、アーノルド・シュワルツェネッガーの存在が大きいオリジナルがあるだけに、そんな無謀なリメイクをするのか?が正直なところだった。しかし、オリジナルの舞台だった火星を地球に置き換え、近未来は階級格差社会になっていることを明確にしたりと、変更点は悪くない。とにかく、シュワルツェネッガーを意識しないで見ることを心がけましたよ。

思い返せば、オリジナルの「トータル・リコール」を見た記憶の中で一番鮮明なのは、シュワルツェネッガーではなく、まだ当時「キング・ソロモンの秘宝」ぐらいしか出演作が公開されていなかったシャロン・ストーンの金髪ぶりである。主人公ダグラス・クエイドの妻役で、本当は妻でなく『監視役』だったと告白して、あのシュワにキックを食らわすという衝撃的シーンだった。

では、今回のリメイクではキャストがどうなっているかというと、主演はコリン・ファレルだ。誰が考えても(体格からして)小粒だが、アクションは出来るだろう。そして妻のローリー役はケイト・ベッキンセイルだ。「セレンディピティ」「パール・ハーバー」の頃(2001年あたり)は、いわゆる男優の相手役という役どころが多かったが、東洋系が入っているのか、そのエキゾチックか顔立ちは結構好きでご贔屓女優だった。

2003年の「アンダー・ワールド」から、どうしたことかアクション女優になってしまった。2006年にアダム・サンドラー主演の「もしも昨日が選べたら」という小品だけど素敵なコメディがあったが、その他は「ヴァン・ヘルシング」と「アンダー・ワールド」シリーズが主な公開作で、日本では彼女はアクション作品以外は、公開に至らず未公開女優の印象が強くなってしまった(2008年の出演作は全部公開されていない)。

もう一人のアクション女優ミラ・ジョボヴィッチが「バイオハザード」だけしか公開されていない印象と(実際は違うがヒットの度合いが違う)同じである。そうなのだ!同じなのだ!ミラが夫であるポール・アンダーソンの監督作品に出まくっているように、なんのことはないケイトも「アンダー・ワールド」で知り合い結婚した「トータル〜」の監督でもあるレン・ワイズマンの映画で出ていただけだったのだ!

すると今回は「トータル〜」はどうなったかと言うと、物語の中で妻のローリーの比重が圧倒的に多くなり、監視役から、更にダグラスを最後まで始末しようとする暗殺部隊のボスとなって大暴れするではないか!実はこの映画の『主演』はコリン・ファレルだが、『主役』はケイト・ベッキンセイルだったのだ!そう言いたいぐらい彼女の悪役としての魅力と、アクションシーンは見応え充分なのだ。当然である。監督が旦那なのだから、魅力的に撮らずしてどうするってもんでしょ!

決定的にダメなのはアクションがすべてCG加工が優先しているところだ。もう、こうした映像は見飽きている。だからこそ「エクスペンダブルズ」が再認識されるのだろう。また、同じ原作者とは言え、なにもそこまで「ブレードランナー」(原作タイトル「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」)の世界観を持ち込まなくてもいいのにと思ってしまった。雨に降られたチャイナタウン的風景は、誰もが“「ブレードランナー」みたい”って思うだろう。

いっそ、主人公を「大奥」みたいに男女逆転させ、ケイト主演のアクションとしての「トータル・リコール」にした方が成功したんじゃない?