どんどん良くなる「海猿」!仙崎は浜崎だ!

「BRAVE HEARTS 海猿」は、シリーズ4作目となる。あれっ前作の宣伝文句でラストって言ってなかったっけ?とツッコミを入れてみるものの、ファンの声に答えた続編と聞いて納得するものがあった。なんだかんだ言っても自分も「海猿」ファンのようだ。なぜ、この映画に惚れ込んでしまうかの要因の一つは、映画そのものが独自の世界観を確立し、キャラクターが(漫画とイメージが違うとかいった比較されがち)一人歩きをして、独自のステータスを築き上げているからなのである。

このステータスの確立に成功した先駆者は、西田敏行主演の「釣りバカ日誌」だ。あの浜崎伝助というキャラクターは漫画ファンとは別な立ち位置で、西田さん=浜ちゃんとして、あたかも渥美清=寅さんのように親しまれた存在になっていた。そうなのだ「海猿」の仙崎大輔は浜崎伝助となったのだ!伊藤英明扮する仙崎は、今や『映画「海猿」の主人公』というステータスを獲得したのである。

第1作目は海上保安庁の潜水士を目指す若者たちを描いた青春映画であった。そこには、厳しい訓練の合間に恋愛模様もあり、明らかにトム・クルーズの「トップ・ガン」への意識が見て取れた。好感度はある作品であるが、まさかここまで成長するとは、この時点では思いもよらなかった。映画第2弾の前に、連続TVシリーズとなったことが大きかったのか?やはりTVという媒体の知名度の拡散は、映画の比ではないようだ。

残念なことに、実は映画版第2弾目の「LIMIT OF LOVE 海猿」(残念じゃなく、自分の怠慢でしょ)は見ていないのです(先日のイッキ見に参加すればよかった!)。よって中身が面白かったかは知らないが、興行収入が71億もあるっていうことは、それだけの満足度があったことの証明だろう。そして映画版第3弾作品「THE LAST MESSAGE 海猿」から原作を離れ、オリジナル・ストーリーとしたことが、今回の映画ステータス獲得をより推進した感じがするのだ。ただ3弾目の3D化は全く無意味だったことが、この「BRAVE HEARTS 〜」が2Dで作られたことで証明されてしまったなぁ。

2弾目を見ていないで言うのもなんですが、今回が一番良く出来ているんじゃないかな?116分というコンパクトにまとまった上映時間は、後半の救助活動が実際の時間とリンクして、ほぼ同時進行していく設定にしたためだろう。大作=長尺の概念は不必要と思っているので、この上映時間は立派だ。でありながら、前半に繰り広げられる仙崎のバディ、吉岡と彼女の結婚問題や、仙崎夫婦の喧嘩などのユルい場面は長ったらしく感じたので、ここがスムーズだったら、もっと良かったのだが…。

それでも、ジャンボ・ジェットのエンジントラブルが発生し、時任三郎扮する、海上保安庁警備救難部救難課長の下川が登場してからは至極快調!この地上でジャンボ着陸をどこにさせるかで苦悩する面々が日本映画には珍しくリアルで宜しい!矢島健一(いかにも国交省管理官)、螢雪次朗(最近、ほんとに貫禄付いてきて、この東京国際空港空港長なんてピッタリで、どことなく「大空港」のジョージ・ケネディを思わす!)、そしてジャンボ機の機長の平山浩行と、脇のキャスティングの目配せの良さに納得!

このスケール感のある映画が、ハリウッドに負けない描写を示したのは、事故場面の特撮ではなく(そこは比較しません!)、海面着陸を選択したジャンボ機の着水に備えての準備段階で、海上、地上のボランティアも含んだ人間たちの一丸となって救助に備える、意味のある様々なカットだ。こうした細かい描写の積み重ねがあってこそ、救助成功の場面での感動が倍加することを、ハリウッドはよく分かっているが、とかく日本映画はそこが漏れがちであった。今回は、そこが描けていることが前作を遥かに凌ぐ面白さだった要因と言えるだろう。

海難事故の設定は中々難しいと思いますが、この水準を保って、続編製作、期待しております!

それにしても「テルマエ〜」といい、「海猿」といい、最近のヒット作は男の裸がよく出てくるなぁ、そのサービスカット、必要なのですね…。