「DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る」の成功の要因は?

DoCoMoの『応援学割』のCMポスターに登場している全10人のAKB48のメンバーの名前を、なんとか言うことが出来た。そんなビギナーもどきの隠れファンにとって、このドキュメンタリー映画第二弾は、満足のいく出来であった。第一弾でいささか不満だった部分が、今回は期待に答えられている出来ということ。その成功の要因は、どこにあったか?

今回の監督は、申し訳ないがよく知らない人だ。東宝の関係者に聞いたところAKB48のPVを、大物監督たちが手がける(「フライング・ゲット」は堤幸彦)以前の作品を撮っていた人とのこと。このドキュメントの前作は、岩井俊二監督の弟子的な存在の寒竹ゆりが監督して、女性ならではの感覚はあったものの、ちょっと彼女たちを生々しく描くことを回避していたように見えた。

そう、今回の成功の要因は、いわゆる岩井俊二的なるものを、きちんとリセットしたことなのだ。『少女たちは〜』のサブタイトルは、まだまだ岩井俊二的ではあるが、追っている映像は、彼女たちの芸能というお仕事との格闘とも言うべきものだった。追い込まれていく総選挙、緊張感に包まれるジャンケン大会、そして西武ドームのライブステージの裏側での葛藤の数々は見ごたえ充分だ。

そうした一方で、2011年の3月以降の震災に対する、彼女たちに出来ること(その行動)を柱として見せる映画的構成力も発揮する。基本的にはファンのために作られた映画であるが、仮に、まったく彼女たちに興味をもっていない人が見ても、最後まで見ていられる作りになっている、それが映画としての構成力であり、インタヴュー映像が主体だった前作にはない『見せ場』のあるドキュメンタリーなのだ。

AKBの生みの親である、秋元康氏が画面に出てきたのも大きい。圧巻は西武ドームでの初日公演の出来の悪さに、リーダーである高橋みなみが秋元氏に頭を下げる場面。これで、この集団がいかに高橋のリーダーシップで成り立っているかが分かるのだ。センターは前田敦子だが、リーダーは高橋なのだ。過酷な西武ドーム公演で、前田が体調不良になってステージに立てるか、立てないかの場面はスリリングだが、そこでも高橋を中心に、なんとか前田の不在をカバーしようとする姿勢にグっとくるのであった。まるでアクション映画の山場の場面だ!

映像が迫った被写体が魅力的であることは当然のことなのだが、映画そのものが、単純に“このドキュメント、面白い!”と言える出来であったことが喜ばしいのだった。