熱狂的なファンがいる映画のリメイクは難しいなぁ

フライトナイト」のリメイク製作のニュースを聞いた時は“なんで、コレ?”というのと、“おおっ、そうきたか!”の矛盾するようなふたつの感想だった。前者はリメイクするにはあまりにもカルト的な知名度のみで、一般的に今の観客に訴えるものがないだろうというものだ。ハリウッドは今の相変わらず、リメイクの企画製作をせっせと行なっている。昨年公開では「フットルース」、「わらの犬」とある。そのいずれも『失敗のようだ』。

『失敗のようだ』と書くのは、日本では未公開に終わり、ダイレクトパッケージ扱いで、残念ながら劇場で見ることができないからだ。その無残な扱い自体が失敗作であることを証明してしまっている。まぁ、この2本については“そこに手を出しちゃダメでしょ!”なのだから当然の結果か。ところが手をだして大丈夫な範囲の“もしかしたら、今の技術だったらもっと凄い映画になるかもしれない”感があるのが、この「フライトナイト/恐怖の夜」のオリジナルなのだ。

いわゆるサヴァービアのネイバーズがヴァンパイアだったらというもの。日本語に言い換えると、新興住宅地の隣人が吸血鬼だったら?である。この基本姿勢はオリジナルもリメイクも一緒。主人公は高校生。これも一緒だ。この物語のユニークなところは、、その高校生がナードなくせに、美人な彼女がいること。オリジナル版は、それほどナードな奴じゃなかったと記憶しているが、ここでは、明らかにナードだ。しかし20年以上してナードの存在も変わったようだ。

80年代、ナード(複数系がナーズ)という言葉が、けっこう一般化した。日本では未公開で終わってしまったが、84年にアメリカで大ヒットしたコメディ「ナーズの復讐」が火付け役だったのではなかろうか。ナーズ(今の言い方でいうとオタク青年)たちは仲間で集まって、なにかとイジメに来る、体育会系のマッチョなイケメン(頭は空っぽだけど)に対抗しようとする。そのイケメン達には、お決まりのように金髪美女のガール・フレンドがいて、オタク青年たちには絶対にいなかったのだ。

それが、ゼロ世代(なんか好きじゃない言葉だけど)のアメリカ映画の変貌した点は、このナーズにも、ちゃんとガール・フレンドを用意する。「キック・アス」の主人公の友達のオタク青年にも、彼女が出来てしまうように、女子側にも腐女子が一般化して、カップルに設定することの方が、リアル感が出てきたということのようだ。リメイク版の「フライト〜」にも明らかに、その姿勢が見て取れる。

このオリジナル版が一部に熱狂的に支持されるのは、「フライトナイト」という、ヴァンパイア退治の胡散臭い番組の名物ホストが、いい加減な嘘で儲けいるかが(視聴者は分かっているが)描かれ、んじゃ、本当に出てきたらアンタに退治頼めますか?という設定だからだろう。日本で言えば本当にUFOとエイリアンが目の前にいて、困った人が“矢追純一に助けてもらおう!”とSOSを出すみたいなものだ。そのホスト役が、オリジナル版がロディ・マクドウォールが演じていて、気が利いていたが、今回はそこが弱いのが難点だ。

その分クリストファー・ミンツ=プラッセ(そう「キック・アス」のレッド・ミストの子!)演じる主人公の元親友の設定が良い(オリジナルには記憶なし)。元はオタク同士の親友だったのに、美人の彼女が出来てしまったが故に、距離を置こうとする主人公のちょっとした悩みと、彼が『隣人はヴァンパイアだ!』という話を聞こうとしなかったため、殺されてしまった後悔の部分がしっかり描かれていて好感が持てる。

まあ、ヴァンパイア役はコリン・ファレルじゃなく、誰でリメイクしても、オリジナル版のクリス・サランドンの怖さは出ないでしょ。ガール・フレンド役の女優さんは、ケイト・ウィンスレットを更に美人でゴージャスにした感じ(名前は憶えられません!)で、凄くいいが、これ1本かもねぇ。でも彼女が咬まれ、美女ヴァンパイアになる場面はソソりますねぇ。

オリジナル版の監督トム・ホランドは、「チャイルド・プレイ」も生み出した人でもあり、この2大ホラー映画をモノにし、その名声は永遠になっちゃいましたな!