今回は、意外と俺様映画じゃなかったんだけど…

予告編を見たときに感じたのが、この映画は高所恐怖症の人にはキツイだろうなぁということだった。シリーズ4作目ともなると、このトム・クルーズの大ヒット作の、見る前の感想もそんなもんなのかと思ってしまったほどだ。それだけ、この映画の『俺様、殿様、トム様』の、いわゆる俺様映画のパターンに(つまらないとは言わないが)慣れてしまったのであろう。まぁ、イーサン・ハントは他に誰がいいって言われても困りますがね。

ところが、今回のイーサン・ハントとそのチーム、結構ドジで、どんなミッションも完璧にこなすという展開にはしなかったのだ。ここが決定的に、今までの「MI」シリーズとは違うところだ。ブライアン・デ・パルマジョン・ウー、JJ・エイブラムスといった過去の監督と、今回のブラッド・バード監督との違いは、そうした緩やかな笑いを持ち込んだことだろう。前作が「レミーのおいしいレストラン」というピクサーアニメだが、アニメの監督が次にアクション大作を任されるって、聞いたことないぞ!

だから、そのコメディ要素が発揮された部分を、どう評価するかが分れ目ですな。アクションにミステリーを求める観客には、今回はNG、しかしイーサン・ハントの、けっこう人間味がある部分と、クレムリンに潜り込む、あのヘンテコな変装のいい加減さに笑えれば、逆にOKだろう。

予告編のメイン映像だったドバイの高層ビルよじ登り、飛び移りのアクションにしたところで、チーム内の誰がやるんだ?の場面で、ほかの奴らの『どうぞ、あんたが主役でしょ』的な振りに、トム様が“えっ、俺?”のカットは、まるでダチョウ倶楽部の掛け合いではないか!よって意外やよじ登りアクションがスリリングではなく、よっぽど部屋の中でのキャット・ファイトの方が迫力がある。しかし、ここで女暗殺者を始末してしまったことは解せないぞ。この女同士の確執と、イーサンの悪者退治は二重構造としてクライマックスと成るべきである。

サンドストームの中の『走り』は良い。アクションの基本は走ること。今回のイーサンはよく走って頑張っている。もっと頑張っているのが、サイモン・ペッグ演じるベンジー。物語の序盤、彼の愛すべきドジっぷり(潜入のオドオドぶりはスパイじゃないでしょ)が、『なんだ、コイツ?』と違和感を感じたが、あぁ、これはコメディリリーフなんだと思ってから、コイツがいるから、この映画面白いんじゃないか!と考えを改め、楽しんだ。

そうした、他のキャラクターにちゃんと味わいを持たせたところが、この映画がトムの『俺様映画』にならなかった所以だろう。ラストにミシェル・モナハンをチラリと登場(クレジットないようだが)させ、余韻のある終わり方にしたことも好ましい。正義は勝って、はい終わり、にしなかったところを評価する。

監督のブラッド・バードは、もうアニメーションには戻らないで、さっそく実写第2作目に取り掛かってほしいものである。