「平清盛」、近年稀に見る見事な滑り出しなり!

どこかの市長に痛烈に批判された「平清盛」だが、この発言は全く気にしなくていいよ、とNHKに言っておきたい。その市長さんは、普段ドラマとかをちゃんと見ていないのでしょう。画面が汚いっていう発言って、2年前の「龍馬伝」は見ていなかったのでしょうか?大友啓史が風穴を開けた古めかしい大河ドラマの、それまでの演出とはまったく違っていたのが「龍馬伝」。その画面は決してクリアなハイビジョンではなかったでしょ。

もちろん、今回の演出は大友ではない。彼は映画監督として「るろうに剣心」に向かうため、2011年4月にNHKを退職している。しかし「龍馬伝」同様に『男の生き様』系の大河には、こうした画面がいいではないか!それ以上に画面そのものがダイナミックであり、下世話な言い方だが「江」より金がかかっているんじゃないかい?「江」は後半、まさに関ヶ原の戦い前に見ることを止めてしまったが、それまでの描写への不満は(姫たちの物語だから仕方ないが)合戦の場面がなかったことだった。

それが「平清盛」の第一話では、清盛の育ての父となる忠盛が盗賊退治する場面から、清盛の産みの母の舞子が殺される場面など、ハードだが見ごたえのある場面がしっかりと描かれていた。もっとも、物語が面白くなかったら元も子もないが、冒頭の源頼朝の回想という形で物語に入っていき、清盛の出世からその秘密を本人が知るまでと波乱の展開を見せ、、近年の大河の中では最も見事な出来で、大満足であった。

二話目で松山ケンイチの清盛が登場し、三話目で玉木宏源義朝(頼朝の父)が登場と、これからも目が離せない。と言うのも、実は自分の日本史の知識の中で『知っているようで知らない』のが源平の時代で、ここはひとつNHKに教えてもらおうと思っている。もちろん(ほとんど義経だが)平家との戦いで、一ノ谷の合戦での『鵯越の逆落とし』や、屋島の戦いにおける那須与一の、扇の的のエピソードなどは知ってはいるが、いわゆる時代の流れが、実感として分からないのだ。

歴史家の間では一話目のエピソード、清盛の父は白河院だという話は有名なのだろうが、こちらは“へぇ〜っ”である。その白河院(時の権力者、独裁者)を演じる伊東四朗さんは、見事な怪演。気合が入った時の芝居はまったく凄い!今回の見事な滑り出しを支えたのが、この伊東さんと、清盛の育ての父を演じる中井貴一さんということになる。中井さんは助演男優賞ものの「ステキな金縛り」から「ワイルド7」「麒麟の翼」と映画公開が続き、TVはこの大河とフジTVの木ドラ「最後から二番目の恋」の放送と大忙しだ。

昨年の大河は女優主体のものだったので、今回は逆に攻めて来て、男騒ぎ(「新撰組!」とも違う感覚)ものというところだ。それに相応しい男優陣のキャスティングであり、松山、玉木、岡田だけでなく、松田翔太藤木直人上川隆也山本耕史森田剛と続々登場だ。さらにベテラン陣は中井、伊東だけでなく、小日向文世、尾上梅雀、中村敦夫國村隼と渋いところ。

まあ大河ドラマに関連する観光地側の期待は、その経済効果の大きさ故、過剰反応しがちだが、まずは物語が面白いのか?その面白さはどこから来るのか?そこが基本でしょ。ちゃんと物語に対して発言しましょうよ。