主演女優は神楽坂恵さんでしたね!

矢継ぎ早に新作を発表している園子温監督であるが、その話題の新作「ヒミズ」は後に語るとして、まずは順番に「恋の罪」を確認だ。そもそも、この映画の大きな話題は園監督の新作というより、我らが水野美紀さんが脱いでくれているという話題性の方がオヤジ的には最優先だった。メインビジュアルも、もちろん水野さんで、どれだけ凄い描写があるのかと期待し、冒頭のシャワーシーンに生唾ごっくりで映画は始まったのだった。

ところが、すぐにこの映画の主役は園監督のミューズである神楽坂恵が演じる小説家の妻、めぐみであることがわかる。前作「冷たい熱帯魚」のヤバイ奥さん役とは打って変わったセレブ妻だ。しかし、夫の愛を少しももらえず、悶々の日々の妻がこれまたヤバイ、そして魅力的だ。その部分だけで映画が成立させれば、立派なロマンポルノとなるのだが、園監督は、そっちの方向には行かない。

そもそも、この映画自体は実際にあった渋谷区円山町のラブホテル街で、1人の女性が死亡した事件を題材にしたもので、その事件自体は(記憶では)平凡なOLが夜になると売春をしていて、事件に巻き込まれたとかいうものだった。そのOLを主婦に置き換えて、人間の欲望と、残酷さを暴いてみせる『園ワールド』なのである。そして主婦一人では物足りないので、彼女を夜の世界に引きずり込む役として、大学助教授の女性役に冨樫真を用意し、殺人事件を捜査する女刑事に水野美紀という訳である。

大いなる見所は、日常を持て余していた主婦が、どんどん堕ちてゆく様だ。最初は満たされない欲望を、夫以外のセックスで開放されるが、助教授に『金銭のやり取り』こそいわゆる体を売るアイデンティティと教えられ、いくらでもいいから『お金』という展開が痛快だ。すると奥さんの声からか細さが消え、肉体の迫力(神楽坂恵さんは素晴らしい!)と発声が見事にリンクするという面白さ!

この堕ちてゆく主婦の夫役が津田寛治だったので、『おっ、出てるねぇ、なんか変な役だなぁ』と嬉しくなって見ている反面、彼が家の外で変態していることはすぐに想像付くので、後半二人がラブホテルで顔を合わせても驚きはしない。ちょっと分かりやす過ぎるキャスティングかな。そして今回のキャスティングは女優主体のため男優が見劣りしてしまう。「冷たい熱帯魚」では吹越満、でんでん、渡辺哲さんなどがいたから、余計にそう思ってしまう。

肝心の水野さんの吉田和子という家庭では主婦、外では刑事という役は、結局捜査的には活躍しない。主婦の時の、夫の友人に弄ばれている部分の印象が強くなってしまい、「0課の女 赤い手錠」(女刑事ポルノの傑作!)というわけにはいかなかった。水野さんがアクションを出来るのを知っているだけに、よけい残念に感じてしまうのだろう。神楽坂さんが「冷たい熱帯魚」をステップに、今回の大ジャンプを果たしたように、水野さんにはもう一回、園監督と組んで、もっと色々と見せてほしいなぁ。

それにしても、今回の画面には、女の裸と雨という組み合わせが際立った。それって実は石井隆の世界だよねぇ(それも劇画の石井ワールド!)。園監督もどこかで石井隆の影響を受けていたのかな?