岡田将生くんに、もうゾッコン!

25歳以下の若手俳優の中では、頭抜けた存在となった岡田将生は、今年も大活躍の予感で、NHK大河ドラマ平清盛」では、ナレーションまで(役は源頼朝)努めてしまう。2007年の「天然コケッコー」で初めて見て(同年公開の「アヒルと鴨のコインロッカー」はチョイ役なので除外)注目してから、2009年の「ハルフウェイ」からは、すべての出演映画を見ている。「告白」と「悪人」の2本での助演が評価されたが、作品一本請け負っている『ド主演作』(主演作は「ホノカアボーイ」があるが)がなかった事も事実だ。

そうした意味で、キチンと主演として映画一本請け負った、最新作の「アントキノイノチ」の頑張りは、更なる成長が見られて嬉しかった。一見すると榮倉奈々とのダブル主演という形に見えるかもしれないが、ちゃんと見ていたら岡田将生の主演映画であることがわかるであろう。その期待に答えるように、彼の演技も眼と細かい表情で感情を表すことに成功し、いわゆる成長の跡が見てとれたのだった。

岡田扮する杏平は虐め、榮倉扮するゆきはレイプと、心に深い傷を負った若者二人が、遺品整理業という特殊な仕事の現場で知り合い、お互いの魂を癒そうと近寄ってゆく、痛いけれど爽やかな青春映画だ。瀬々敬久監督はうまい具合にメジャーとインディーズを行き来していると思っている。これは若い俳優を生かすことを求められた、ある意味請け負いの仕事かもしれないが、手腕は見事だ。特に学生時代の過去の虐めの場面と、現在の杏平とのカットバックと、引きのショット(二人のデート的な場面)の構図が良い!

そして引きの次に撮るアップの場面で、岡田の細かな眼の演技となる、その抑揚が心地よい。この岡田の見事さは「平清盛」の第一回目の放送のファーストシーンでも見ることが出来た(視聴率は悪かったようだが、個人的には近年の大河で、最も素晴らしい初回だった!)。壇ノ浦の合戦で平家を滅ぼした源氏の頭領の頼朝が、その勝利の一報を聞いた時、なんとも複雑な表情を見せるのだ!

もう、この若者は、どこまでオヤジを虜にしたら気が済むんだ、と言いたいぐらい岡田将生にゾッコンである。

しかし、映画そのものには不満。というかラスト10分までは、2011年度ベスト10入り確実だったのに、その最後の10分で、すべてぶち壊してしまったのだ。さだまさしの原作がどうなのか知らないが、姿を消したゆきを探し出した杏平が、再び心を通わす浜辺の名場面の後、これから新たな人生を歩もうと決意するゆきの目の前に、大型トラックが走って来る。その前を子供が横切ろうとした瞬間“韓流にしないでくれ!その必要がどこにあるんだ!”と心の中で叫んだが、時すでに遅し。映画はあっさりと、ゆきを殺してしまったのだった。

最後はゆきの部屋の遺品を整理する杏平の号泣と、そこに訪ねてきた助けられた少女との対面で、成長した杏平がいるというラストシーンだが、この部分の韓流テイストが、どうにも心地悪いのだ。あの浜辺の場面で、スッとエンディングを迎えていたら、どれだけ鮮やかだったか、まったく惜しいったらないのである。

TVドラマも含め、日本の映像作品の悪いところは、最後に多くの登場人物を殺して、涙を誘おうとする姿勢だ。どうして、そこまで必要なのか?そんなのは韓国に任せておけばいいじゃん、が多いのである。ともかく、カーブを曲がってくるトラックを見た瞬間に、びっくりするほど冷めてしまいました。改めて映画って最後が重要なんだねぇと思いましたよ。まぁ、だからといって岡田将生への評価は全く変わりませんがね。

あと相変わらず、ちゃんと演技する時の原田泰造は良いなぁ。だから「ネプリーグ」との彼のギャップに戸惑うのである。原田も含め、きちんと演技をする芸人を一度整理整頓しなければならないぞ!