吉高由里子の魅力が分らない

遅ればせながら「カイジ2」を見た。相変わらず、藤原竜也の大袈裟に叫び続ける演技には引いてしまいながらも、弱者(それには、原因はありますがね)が権力に向かって行く構図は、それなりに楽しめてしまうのであった。物語自体も前作を踏襲しながらも、全く同じシュチエーションとはせず、「オーシャンと11人の仲間」ならぬ、「カイジと3人の仲間」といった趣で、権力者は孤独であるが、弱者には仲間がいるとして“共感”を呼ぶ展開だ。

ただ、この映画にもし、伊勢谷友介香川照之(おっと、よく考えれば、力石徹丹下段平ではないか!)がいなかったらと思うと、ゾッとすることも事実だ。今回は最大権力者が登場しない分、成りあがりで現場統括(的な存在が伊勢谷)まで来た男と、カイジたちの現場同士の一騎打ちのみで、その対立構図をしっかり支えているのが、その二人だ。そんなことを感じて見ているから、余計に(紅一点なのに)吉高由里子の存在に『?』が付いてしまうのであった。

フィルモグラフィーを眺めれば「紀子の食卓」があるのだが、未見のため吉高由里子という女優を初めて見たのは「蛇とピアス」ということになる。蜷川幸雄がなぜ、こんなにまで若者に媚びなきゃならんのか!という感想しかない映画だったが、細身の裸身が美しかった吉高さんは大いに注目された作品だった。しかし、その後の吉高由里子の出演作を(映画に限るが)見てはいるものの、この女優のどこが魅力的なのか、ちっとも分らないままなのである。

と言っても前作の「カイジ」と「GANTZ」2部作と小さな役の「重力ピエロ」だけで、肝心の「婚前特急」は見ていないので、あくまで、この「カイジ2」を見た上での印象だけだが、彼女の演技から、未だに迫ってくるものを感じられないのである。カイジの3人目の仲間という重要な役どころなのだが、その大きさを感じられないのだ。軽いのである。むしろもっと若い谷村美月や、成海璃子あたりの方がずっと大きく重く感じるんじゃないかと思ってしまう。

要するに何本か見ているものの、『この役は彼女しかできない』とか『彼女ならではの魅力』という感想(2011年度で言えば、分かりやすい例は「ステキな金縛り」の深津絵里か)を持ったことが一度もないのだ。もしかして「婚前特急」が、その彼女しかできない役だったのかもしれない。未見の自分を恥じつつも、現時点の素直な感想は以上のとおりだ。

しかし(事務所の力だけではないでしょ)今後の出演作は、園子温監督話題の新作「ヒミズ」から青春映画の注目作「僕等がいた」前後編の2作までと続々あり、「僕等がいた」では生田斗真とのダブル主演という立ち位置だ。見るこちら側との感性の違いだけなのかもしれないが、作り手側は彼女を評価している結果の、出演作の数々なのであろう。こうして考えてみれば、もしかして2012年は吉高由里子という女優の魅力を確認できる年になるかもしれない、と期待しよう。