確かに凄いな立体画像だけど…

個人的は眼鏡の上にメガネが、堪らなくうっとおしくて大嫌いな3D方式だが、当然入場料が高いことも不人気の要因だ。しかし、意外にあるのが『100円で、メガネを買わされる』という不満。2Dと共通の前売り券で、3Dしか上映していないので、仕方なしに見なければならない場合、3D入場料との差額を払い(メガネ回収方式の上映ならそこまでだが)、更にメガネ代100円取られるという段取りだ。最初の頃は全て回収方式だったと記憶するが、衛生面やメガネ管理の経費を考慮して登場したのが、このメガネ持ち帰り方式だ。

頻繁に利用する新宿ピカデリーは、未だ回収方式なので自分が持ち帰りに慣れていなかったのだが、何を見たか忘れたが、持ち帰ったメガネは当然のように、その辺に置いたままとなった。そしてなんの意識もなくジェームズ・キャメロン製作総指揮の「サンクタム」を見に行った時、100円でまたメガネを買わされたのという訳。チケットカウンターのお姉さんに、マニュアル通りの“メガネはお持ちですか?”と聞かれて、初めて『持ち帰ったメガネは次に持って行くためのモノ』と実感したのであった。それと同時に、持ってる訳ないだろう!と心の中で毒づいたのだった。

ところが更に次に(これまた、何の意識もせず)「ラビット・ホラー3D」を見に行ったら、また“メガネはお持ちですか?”と来た。またまた持ってるわけないだろ!と思ったが、よく考えてみたら前回「サンクタム」を見た時、メガネはカバンに入れたままだぞ、と思い当たった。ここでの問題は、『この映画館は、このメガネをお持ちいただければ、100円取られません』と確認する術がどこにもないことだ。方式も異なるのだから、持っているメガネが合っているかも、個人ではわからんでしょ。受付のお兄さんに“このメガネで見れるの?”と聞いても、即答出来ず、100円で売ろうとしていたモノと見比べて“はい、使えるようですね”となった。

同じシネコンだったら、同じメガネだろうと予想がつくが、一方がシネコン、一方が独立興行系の映画館で、どうやったら方式の確認が出来るの?今それが出来る状態じゃないのが、3D興行の実態だが、それを何とかする動きが、あるような無いような…。それからはカバンの中には、メガネが常に入っている状態になってしまった。おっと、今回の本題は、そんな状態で見た「サンクタム」と「ラビット・ホラー3D」なのに、前置きが長くなったぞ。

3Dの大先生、キャロンが製作総指揮となっている「サンクタム」は、さすがの3D効果のある画面となっている。単なる奥行き感だけではなく、隅から隅まで人間の見る目に近い立体画像だ。しかし、映画の本質は立体画像ではなく『物語』、そこが何とも弱い。やりたいことは洞窟の中の「黄金」(そう、ジョン・ヒューストンの名作のアレ!)だということは分かるが、助かる人と助からない人のメリハリがない。本当のドラマとしての骨格がないのだ。この監督も映像への執着のみで、人間には興味がないのであろう。

またユニバーサル・ピクチャーズの作品といえど、製作国は(合作だけど)どちらかというとオーストラリア。その地元の俳優を使われては、こちらとしては役者に馴染みがない分、感情移入がすんなりと行かない。同時期に公開の、大企業を次々にクビになる男たちを描いた「カンパニー・メン」は、ベン・アフレックトミー・リー・ジョーンズクリス・クーパーケヴィン・コスナーという見事なオッサン役者の顔ぶれで『キツイ話』だが、映画的には安心して見ていられる。顔がわかるキャストって必要だと二つの映画を見て感じたのだ。立体画像製作費を少しばかりキャストに使ったらよかったのかもね。

サンクタム」と同じREAL3D方式で上映の「ラビット・ホラー3D」も素晴らしい立体画像であった。撮影監督にクリストファー・ドイルを迎え、世界初の一体型二眼式3Dカメラ(開発はパナソニックとのこと)で撮られた映像は、もの凄い奥行で(目の錯覚を覚える)スクリーンが小さくなって見えてしまうほどだ。なんか言葉で説明しにくので『映画を見ればわかること』になってしまうが、あまりの立体に気持ち悪くなってしまったほどだ。監督の清水崇は「戦慄迷宮3D」ですでに立体映画を経験しているので、手馴れたものなのだろう。

では、お話のほうはと言えば、ここでも『俊雄』君キャラを登場させ「呪怨」を踏襲して、そこにシャマランの「シックス・センス」を盛り込んであるため、パターンではあるが安心して見ていられる。でもその安心感は、結局のところ、満島ひかり香川照之大森南朋といった役者がちゃんと揃っているが故に感じることなのだ。

そう、3Dにだってちゃんとした俳優が必要だという確認ができた2本の『凄い立体映画』というオチでした。