頑張れ、メル・ギブソン!負けるな、ハリソン・フォード!

代表作「リーサル・ウェポン」シリーズ、「ブレイブハート」でアカデミー賞監督賞受賞という輝かしいキャリアのメル・ギブソンも今年55歳。一方「スターウォーズ」のハン・ソロ役でスターダムに駆け上がり、インディ・ジョーンズ役でその座を不動のものにしたハリソン・フォード69歳。共に80年代のアメリカ映画界で大活躍をした二人が、奇しくも今年アクション映画で再びその存在感を示してくれた!

メル・ギブソンは2002年の「サイン」以降、「パッション」と「アポカリプト」の2本の監督作があるが、役者としてはコレといった作品がなく、むしろプライベートでの言動と、そのトラブルのほうが目立っていた。ハリソン・フォードも前作「恋とニュースの作り方」で、偏屈は老ニュースキャスターを楽しそうに演じていたが、2008年の「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」を最後にアクション映画からは遠ざかっていた。

それが「復讐捜査線」(メル)と「カウボーイ&エイリアン」(ハリソン)で、二人とも流石に様になっているアクション場面を演じてくれていたので嬉しくなってしまった。特にメルの『復活!』(宣伝文句でもあったが)は喜ばしく、その銃を構えるポーズのカッコよさは、思わず『おぉ!マーティン・リッグスだ!』と叫んで(心の中で)しまったのだった。

復讐捜査線」のことは、だいぶ前に配給会社の人間から“彼が演じる刑事が、自分の娘の死を捜査して行くんですけど、その事件のネタがやばくて公開が見送られそうになったんですよ”と聞いた。確かに軍事兵器と放射能だけど、そんなことを言ったら『午前十時からの映画祭』で「バック・トゥ・ザ・フューチャー」も上映出来ないじゃないか、ということで無事メルの勇姿が拝めたのだった。

そして感じたことは、やはりメル・ギブソンはこうじゃなくっちゃ!だった。今後も、このスタンスでアクション映画に出演して欲しいなぁ、だって55って歳をクリント・イーストウッドに当てはめたら「シティ・ヒート」「ペイルライダー」「ハートブレイク・リッジ」の頃ですよ!全然老け込む歳じゃないでしょ。頑張れメル・ギブソン

アクション場面とは関係ないが、川本三郎さん的な見方をいつも多少意識して見ているせいか、劇中でメル・ギブソンが言う“気持ちを落ち着かせるには、ジンジャーエールを飲むといい”という台詞が印象的で気に入ってしまった。すると凄くジンジャーエールが飲みたくなり、映画を見終わってから、思わずコンビニへ買いに行ってしまった。

映画自体の公開規模は、日本ではそう大きくなかったが、アメリカでは配給ワーナーブラザース、製作は最近元気が良いグラハム・キングのGKプロという立派な規模。監督は「グリーン・ランタン」が公開間近なマーティン・キャンベル(「007」の監督といった方が通るか)、脚本は「ディパーテッド」のウィリアム・モナハン、音楽がハワード・ショア、編集は監督業もこなすスチュワート・ベアードといった面々の堂々たるスタッフの作品だ。その辺のインディーズ・アクション映画と同じだと、勘違いしてはならないのだ!

そして、ハリソン・フォードの方は「カウボーイ&エイリアン」で、主演のダニエル・クレイグと共演の形になった時、業界は『ボンド&インディ』と騒ぎ出したが、ダニエルのボンドに『?』なので、競演の文句にピンと来なかったが、作品を見てハリソンのインディっぷりに大拍手となったのだ。

西部開拓の時代に、なんとエイリアンがすでに地球に到着していて、人間を襲ってくるという奇想天外な話だが、基本は西部劇だ。と言うより『ウエスタン』の構築に必要な要素が全部入っていて、ファンには堪えられない(この設定を許せればだが)場面の連続だ。すなわちサルーンがある街、その街を牛耳る牧場主(ハリソン)、その息子はお決まりのドラ息子。記憶を失ったカウボーイのクレイグは、その牧場主と対立しながらも、エイリアンに誘拐されたドラ息子の搜索に向かう。その街の保安官も誘拐されており、その幼い息子も捜索に同行する。

ここまでの展開で、どれだけの西部劇がインスパイアされているか?街は「真昼の決闘」であり、街を牛耳る牧場主との対立は「リオ・ブラボー」、ドラ息子は「大いなる西部」で、そのものズバリの「捜索者」から、幼い息子の成長はまさに「男の出発」という按配だ。そしてインディアンも登場して、捜索に協力し、エイリアンとの対決はお決まりの渓谷が舞台ときた。

そのエイリアンとの対決のアクション場面で、テンガロンハットを被ったフォードが、馬に跨り闘うシーンは、正にインディ・ジョーンズそのもの。そうか!「インディ」シリーズが西部劇を基本としていた活劇だったことをすっかり忘れていた。ハリソン、思い出させてくれて有難う!こんな元気なハリソンも久しぶりだ。何年か前に来日した時のインタビューで“上にはクリントがいるんだから、俺もまだまだこれからだよ”的な事を言っていたと記憶する。

そうなのだ!元気なクリント・イーストウッドをお手本にして、負けるなハリソン・フォードとエールを送ろう!