「2」のレベル維持に必死のハリウッド

ハリウッド映画の嫌われる理由のひとつに、続編があまりにも多いということが挙げられる。ひとつのヒット作をを生み出すのに苦労するからだろうが、ひと度ヒット作となった企画は、すぐにシリーズ化され、飽きられるまで作ろうとする。その貪欲さには感心するしかない。それだけに「2」のクオリティ維持に必死になるという構図だ。

続編製作にそれほどのエネルギーがかけられるなら、もっと新しい企画で、別なヒット映画ができないものかと考えなくもないが、まずは前作の知名度を利用して、興行の安定路線を選択してしまうようだ。

一昔前のヒット作の2作目は、前作がヒットしているからといった甘い考えで、至極お手軽に作り失敗したパターンがあった。特にコメディ多かったようなイメージがある。「ポリス・アカデミー」から「デンジャラス・ビューティ」あたりまでと言えようか。しかし、最近は「2」が成功すればその次もあるさとばかり、真剣に製作されているようだ。作品の知名度のみで「2」がヒットするとは、さすがのお気楽ハリウッドも考えていないとみえ、作る限りはちゃんとしたもの目指そうとする。その証拠に、ここ最近見た「2」もののレベルはきちんと保たれていたのだった。

ひとつは「ハングオーバー!!史上最悪の二日酔い、国境を越える」。言わずと知れた「ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い」の続編だ。そもそもこの手のコメディはアメリカ国内の興行でしか成立しないと言われ、この「1」もダイレクトDVDの予定だったのだが、なんとゴールデン・グローブのコメディ/ミュージカル部門の作品賞をとってしまい、急遽公開となった、いわば誰も予想しなかったヒット作だ。

こうしたコメディ映画の「2」では、余計な要素を入れないことが鉄則。同じキャストで、同じ物語をもう一回やればいいのだ。肝心なのは舞台設定を変えることと、一層のパワーアップをさせるということ。お馴染みの主人公たちに、観客は同じ目にあうことを期待しているのだから、その部分をさらに悲惨にすれば良いのだ。そういう意味で「ハング〜2」のアイディア勝ちは舞台設定だ。あの記憶のない二日酔いは、ラスベガスという歓楽の地でしか成立しないだろうと思っていたら、海外のリゾート地という手があったのですねぇ。それもタイというオカマちゃん天国の場所と来ては、過激度を増すには絶好の選択というところだ。おかげで日本の公開では、修正を入れざるを得ない作品になってしまったではないか!

あとブラッドリー・クーパー以外のキャストが、どうにも受け付けられない前作だったのに、「1」から「2」の間に「デュー・デート」が挟まったお陰で、ザック・ガリフィナーキスを“こいつはこういう俳優なんだ”と受け止められるようになっていたことも楽しめた要因か?また前回は気がつかなかったけれど、チャイニーズ・マフィアのMr・チャウは、いうなれば「Mr・Boo」のマイケル・ホイの役どころだったのですねぇ。

もうひとつの「2」もので、ちゃんと出来ていたのが「カンフー・パンダ」だ。もうひとつの続編のパターン。主人公の人物像(パンダですが)を更に掘り下げてみせるという手法を用いている。すなわち主人公ポーの出生の秘密を持ち出し、産みの親と育ての親、そしてアメリカ映画大好きの『擬似親子の愛情と絆』を描いて見せたのだった。

もちろん、後半の怒涛のCGカンフー・アクションシーンと、その3D画面は見応えがあるが、それだけでは「1」に対しての、技術の向上を見せただけになる。そこをキャラクターをさらに膨らませ(「ハング〜2」と同じように)、仲間と家族を見せることでエモーショナルな感情表現に注力しているのだった。出生の記憶に悩むポーの過去は、ちょっとしたミステリーの味わいさえあるのだった。

共に「3」が作られるのかは、分からないが「2」まで成功と判断できれば、いわゆる3部作というネーミングに持っていけるのが(まさに「トランスフォーマー」のように)ハリウッドの常識ですからねぇ。