青島俊作より黒田康作だ!

いまでも不思議なのは織田裕二主演の「アマルフィ 女神の報酬」の公開時での散々な言われ様。そんなにつまんなかった?
なんか日本映画の、東宝配給の局製作の大作に対して、キネマ旬報ベストテンに入らなきゃ認めないとか、作家としてのテーマ性が発揮されていなけりゃ、鑑賞に耐えられないなどと構えて映画を見すぎてない?

これをハリウッドに置き換えれば、局製作ものはメジャースタジオの映画である。そのメジャースタジオはなにを主眼として映画作っています?まずは観客が望むスタームービーでしょ、そして時間を忘れさせてくれる娯楽性でしょ、それが観客動員の数字になって表れれば、成功という図式になっているではないか。

それを「アマルフィ」に当てはめれば、織田裕二という多くの人に認知されている俳優に、黒田康作という新しいキャラクターを与えたスタームービーということになる。そのキャラは冷静沈着な外交官。さらに普通の外交官ではなく、邦人テロ対策室という特殊な部署のミステリアスな部分を持つ人物だ。これを魅力的な人物設定と言わずしてなんと言おう。

そして映画的スケール感を出すべく、海外ロケを敢行、その効果ある場面が撮れているではないか。そうして公開された映画は(ハリウッドもそうだが、批評の低さをもろともせず)多くの観客に支持され、30億越えのヒット作となった。面白くなくて、こんなにヒットをするはずはないではないか!当然のごとく、これだけのヒットとなれば、続編が製作される。それが「アンダルシア 女神の報復」である。

ハードルの上がった2作目であるが、すでにTVシリーズも放送済みで、キャラクターの認知があるという自信から、かなり大胆な導入部から始まった。パリサミットを直前に控えた日本の大臣は、アメリカの要人とどうしても先に会談したいが、そのセッテイングが普通では出来ない。それを黒田がやってのけるというものだ。この場面、一見すると「007」シリーズのオープニングのように、さほど本筋とは関係ないと思いがちだが、実は後半に向かっての伏線。これは見事でしたね。

アマルフィ」は、黒田の孤軍奮闘の活躍(キャラを知らしめるためには、その展開とならざるを得ない)で、ローマの街を走り回ったが、今回はアクション的な黒田の活躍というより、要人の殺人と国際金融社会の陰謀を解くというタイプで、ミステリーとしての魅力に溢れた展開となっている。そして事件を解明するするのは、黒田一人ではなく、インターポールに所属する神足(伊藤英明)という刑事が加わる。ここに今回はバディムービーの要素も加わる。

ラストへ至る展開も、かなり緻密に練られていて、けっこう驚かされた後、おおっ、そう来たか!と思ってしまった(簡単にいうと騙されました)。さあ、騙す人は誰でしょう、が今回の大きな見どころです。というわけで2作目は、趣向を変えて、またまた満足いく出来ばえでした。まあ、西谷監督にしてみれば『俺だったら、これぐらい出来る!』だろうが…。

個人的な不満な箇所をふたつほど。予告編でも出てきているので、隠さなくていいので書くが、黒木メイサ織田裕二のキスシーンは余計だ!冷静沈着な黒田がこうなってはいかん!このキス抜きで、黒田は事件を解明すべきだった!もうひとつは神足のプライベートな部分。このミステリーにウィルメイドな部分は不必要だ。家族と過去の話はメイサ扮する結花の話だけにして、神足は一匹狼のやさぐれ刑事(デカ)にすべきだ。その方が、黒田との対立と共感の構図が鮮明になったはずだ。

それと、中盤の3人が乗った車がトラックをぶつけられてのアクションシーンが良く出来ているから余計に、ラストにもうひとアクション(銃撃戦!)が欲しい!そこで神足が死ぬ展開もありじゃないかなぁ。

そうしたら男泣きでっせ!!