愛しのジェシカ様!

ロバート・デ・ニーロダスティン・ホフマンバーブラ・ストライサンドオーウェン・ウィルソン、そして主演のベン・スティラーと役者が揃っているのに、結局劇場公開はされずに、DVDストレートとなってしまった「ミート・ザ・ペアレンツ3」の発売のための注文書を見ていたら、『おぉ、ジェシカ様、ここにも出ていたのか!』と喜んでしまった。

海外TVほとんど見ないので「ダークエンジェル」で出てきた時の彼女は知らない。映画出演の最初は「シン・シティ」からだったろうか。それ以来、ジェシカはラジー賞の常連となる。まるでノミネートされるような映画ばかり好んで出演しているのではないかと思えるほどである。そしてセクシー女優と呼ばれることに対し、義務的なほどサービスショットのある映画ばかりだ。しかし彼女のポリシーなのか、バストトップは決して見せず、見ているこちら側をイラっとさせたりする、本当にユニークな女優だ。

出演順と公開順がバラバラだが、「ミート〜3」も入れて「マチェーテ」(これが一番の露出か?)「キラー・インサイド・ミー」「アウェイク」と途切れなく出演作の登場だ。まるでレンタルショップで言うところの『ジェシカ祭』だ。一番の見せ場がある作品が「キラー〜」だ。ジム・トンプソン原作「おれの中の殺し屋」の映画化で、この中のジェシカは“殴られる女”だ。なんという見事な殴られっぷりだろう。長年映画を観てきたが、これほど派手に殴り倒される女優は初めてだ。アラン・ドロンの「ビッグ・ガン」のカルラ・グラヴィーナ以来で、それ以上だ。

まあ、この「キラー〜」という作品自体が保安官助手でありながら、殺人衝動を抑えきれない男の凄まじい映画なので、ジェシカだけでなく、ケイト・ハドソンも見事に殴られ、膀胱破裂で小水が漏れてくるというとんでもないシーンがある。ケイトも、いままでのロマンチック・コメディ女優の印象をかなぐり捨てるような、いわゆる“ふしだらな女”役だ。

監督のマイケル・ウインターボトムはイギリス人なのに、こんなアメリカの片田舎を舞台にした、バイオレンス・ノワールを撮るとは意外であった。もっともこの監督は多彩なのは分かるが、あんまり好きでなく、積極的に作品を見てこなかったので、そう多くは語れない。

むしろ、この映画は監督で見るより、役者を見る楽しみのある作品だ。主演のケイシー・アフレックは、こうした変態役はお手のもので、兄のベンには、決して出来ないだろう。同じ兄弟なのに、こうも違うのか!他にも、ネッド・ビーティ(懐かしいなぁ)、ビル・プルマンサイモン・ベイカー(なんか「メンタリスト」と同じ捜査官だ!)といった、なかなかの男優陣だ。

一方「アウェイク」のジェシカには、すっかり騙されました。最後の展開の描き方はダメだが、設定自体は意外性があってビックリだった。主演はめっきり作品数がなくなったヘイデン・クリステンセンジェシカは、そのヘイデン君の恋人役)で、彼の心臓病手術の間で起こる(彼の幽体離脱で物語が語られるという設定)、彼に対しての殺人事件だ。

というジェシカの出演作であるが、「ミート〜3」でも「キラー〜」「マチェーテ」でもラジー賞助演女優賞獲得、「アウェイク」もちゃんとノミネートとなっている。彼女も本物のオスカー像を欲しいと思う心があるのだろうか?もし、なくても今後も応援していきますからね…。