ヒネりが効いてる「アンノウン」

スターウォーズ エピソード1ファントム・メナス」でクワイ=ガン・ジンを演じて以来、すっかりマスター(師匠)役のイメージが強くなったリーアム・ニーソン(「ナルニア」のアスラン王の声もあり)だったが、2009年の「96時間」でアクションも出来ることを証明して、イメージチェンジに成功した。これはリュック・べッソンに感謝しなければ、ですね。

1952年生まれなのでリーアムが「96時間」に出たときは、なんと57歳!普通はこの年齢ではアクション映画は出ないでしょ。それにチャレンジしたのは見事な決断。一方では「クロエ」のように、学生の憧れの的の教授といったような知的な役もしっかりこなしている。その知的な役柄のイメージで、「アンノウン」ではやはり学者役で、学会に出席する学者という設定で、ベルリンに来るところから映画は始まる。

映画ファンには嬉しいキャスティングになっている映画で、脇にブルーノ・ガンツを配している。その彼の名前のクレジットの文字に被るようにして、『例の映画』で一躍有名になったベルリンにある、あの像が映し出される。『例の映画』はスキじゃないけど、このリスペクトには好感を覚える。もう一人の気になるキャスティングはリーアムの妻役のジャニュアリー・ジョーンズエミー賞の常連番組「マッドメン」で人気の金髪女優で、彼女はこの後「X−MENファースト・ジェネレーション」という大作を控える注目の女優だ。

その妻と仲良くベルリンに来た主人公が、交通事故にあって、パスポートもないまま4日間入院、意識が戻り妻を探したところ『あなた、誰』となるのが映画の導入部。ここまで快調である。いったい彼の存在をどうして妻は否定するのか?同じ名前の夫がいるのはなぜか?こうした疑問を解くために彼は事故にあった時の女タクシードライバーを探し当てる。女タクシードライバーを演ずるにはダイアン・クルーガー。彼女は不法入国の労働者で、事故のあと姿を消したのだった。

彼女の家に転がり込んだところに殺し屋登場、なぜ命が狙われるのか、のサスペンス・ミステリーとなる。実はここまでリーアムのアクションはない。しかし、殺し屋とのカーチェイスで、この学者が見事なドライビング・テクニックを見せる。誰しも“なんで学者がこんなに運転うまいんだ?”と思うところがヒネってあるところだったんですね。エチケットとして、物語の結末は言ってはならないが“俺は誰?”の展開が思わぬ方向へ行き、リーアムのアクションスターとしての見せ場がやってくるのでした!

後半は、アクションもあり、まったく飽きさせないが、よく考えると相当荒っぽい映画ですな。“俺は誰?”を探るのに協力を仰ぐ、元東ドイツ秘密警察の一員という設定で現れるブルーノ・ガンツが、真相を知る過程が見事にすっ飛ばされているし、大御所フランク・ランジェラも流石の存在感で現れるが、それでいいのか?という短い登場時間。相当な組織を相手にした展開のはずが、すっごい脳天気なラストシーンで、苦笑してしまった。しかし、ダークキャッスル製作(よって配給はワーナーブラザース)は、このBテイストでよろしいのである!