いつの時代もアイドル映画!

6月4日封切りの通称「もしドラ」、映画「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」が楽しみでしょうがない。話題のベストセラーの映画化とか、原作がどうのではない。久しぶりに正統的アイドル映画が誕生しそうな予感がするからである。そう、この場合はAKB48に所属する前田敦子。いつの時代も映画界はアイドル映画で元気を出さなければいけないのだ!

世界の映画史全般を見渡すより、日本に限ってのほうが分かりやすいので、1960年代以降の各映画会社が産んだアイドル映画を見渡すとしよう。するとそこには日本映画の元気の源としてアイドル映画が存在していたことが分かってくる筈だ。

60年代の日活における吉永小百合映画をアイドル映画とするには、いささか作品を検証していないので自信がないのだが、当時の映画ファンの男子においては、小百合さんは立派なアイドル(その言葉がなかったのかな?)だったであろう。しかし遅れてきた映画ファンにとっては日活青春映画のスタアで、アイドルという感覚ではとらえきれないのも事実。

むしろ60年代後半の東宝の青春映画路線の内藤洋子、酒井和歌子主演の映画のほうが、アイドル映画として認められる。しかし逆にこの二人にこだわる自分のとっては、二人は『スタア』であってアイドルではなかった(要するにスタアは遠くから憧れる存在、アイドルはもっと近い存在の違いか)。今の和歌子さんの化粧品のCMを見るだけで、ドキドキする!それがスタアの証明だと勝手に思っている。

結局のところ、アイドル映画は70年代から本格的に作られるというのが映画史的には正解か?何故、こんなことを書くのかというと銀座シネパトスで4月に特集上映されていた1976年に、松竹で作られた「青春の構図」という岡田奈々の主演作を見たから。そしてアイドル映画でありながら、プログラム・ピクチャーとして質が求められている時代の良く出来ている青春映画だったからだ。

貧しい境遇で育ち、ひたすら成り上がりたいと思っている若者と、親はないけどガソリンスタンドの経営者になっている女子大生の二人が出会い、若者が、人の愛情を知って新たな人生を歩み始めようとするまでの青春映画だ。基本は身分違いの男女という、いわゆる「愛と誠」のパターンに、アメリカ映画の傑作「陽のあたる場所」の設定をうまく捻ってある。そして、その女子大生に岡田奈々を配し、大学バスケの選手にしてブルマ姿での登場シーンを作り上げればOKというもの。それでいいのだ!

今回のパトスのアイドル映画特集で登場したアイドルは、この岡田奈々(共演は早乙女愛だった)の他、池上季実子大場久美子山口百恵石野真子岡崎友紀天地真理栗田ひろみといった面々。作品数は圧倒的に山口百惠に軍配が上がるだろう。その他の主演作を持つアイドル女優は桜田淳子浅田美代子吉沢京子といったところ。アイドル映画として製作される、その原作となるのは文学作品が多いことが特徴。「伊豆の踊子」「潮騒」(小百合さんも、百恵ちゃんも)などなど。

80年代に入ると、本格的なアイドルブームに乗って多くの映画が出来る。松田聖子を筆頭に、小泉今日子中森明菜、斎藤由貴、南野陽子あたりが、歌だけでなく、映画も作ってくれた。斉藤由貴主演で、アイドル映画として作られたはずの「雪の断章−情熱−」のように担当する監督次第で、とんでもない変わったアイドル映画も登場するのが楽しい。映画側主体のアイドルでは角川映画薬師丸ひろ子原田知世。特に「時をかける少女」はアイドル映画の登龍門となった。

90年代からこちらはまたの機会、もしくは作品ごとにするが、最近では長澤まさみ主演の「タッチ」「ラフ」が正統的アイドル映画として記憶されている。その正統性のひとつの要素は恋愛とスポーツの両方が物語に盛り込まれること。そうした意味で「もしドラ」が正統的なアイドル映画としての期待値が高いというわけである。