ジャック・ブラックに失望だなぁ

「ハイ・フェデリティ」で見た時のジャック・ブラックは本当に魅力的だった。中古レコード店のオタク店員の役柄はピッタリ当てはまっていて、文句なしの助演賞もの。その路線を拡大した役柄が「スクール・オブ・ロック」の青年役で、音楽好きの本人のテイストも良く生かされていたキャスティングだった。

「スクール〜」はアメリカでも日本でも大成功を収め、いまだにDVDがちゃんと売れている。それは、いつの時代にも通用する(要するに音楽版「がんばれ、ベアーズ」ですからね)普遍的なカタルシスに満ちているエンタテインメンだからだ。しかし、大変残念だが、ジャック・ブラックという役者に関していえば、この「スクール〜」以後、まったく進化を遂げていないのだ。と言うより遂げようとする姿勢が見えないのだ。

では、何故そう感じたか?それは新作「ガリバー旅行記」を見てみれば誰しも感じるところではなかろうか。ここでのジャックの役柄も、ダメ男なくせして自分を知らない人間に対してはビッグマウスで格好のイイことばかり言う、決して好感を持てる人間ではない。相変わらずのイメージ通りの役柄である。この部分をシリアスに演じたのが「キング・コング」だったが、基本的にはコメディだろうと、シリアスだろうと変わりはない。

ナチョ・リブレ 覆面の神様」などは、その路線の典型で「スクール〜」の成功キャラの応用編でしかない。アメリカでも大コケした(日本は未公開、下町コメディ映画祭でのみ1度上映)「紀元1年が、こんなんだったら?」ではっきりしたようにジャックのダメ男役のパターンにも飽きが来ているのではないか。

結局、今回もそんな何事にも自信のない男が、小人の国に行って自分に正直になった上、『頑張って』恋も成功も手にするという話のストーリーの、そのキャラクターに全く新鮮味が感じられず、小人相手のビッグマウスに不快感すら覚える展開ではないか。よって美人女性編集者アマンダ・ピートを恋人にする展開も、説得力がなく“こんな奴に惚れるな!”と言いたくなるほどだ。

また、小人同士のいざこざを収めようとする場面に、音楽好きの要素が入ってくるところも、なんかジャックが遊びたいだけじゃないかとしか思えない。せめてミュージカルにもなっていればまだしも、それも望むべくもない。そうした鼻につくジャック・ブラックという役者が、好みかどうかの問題に尽きるのかもしれないが、これだけの大作の主演を任す存在なのだろうかという疑問が残るのである。

まあ、あんな体型だから役柄が限定されてしまうのかもしれないが、この辺で目付きの悪さを利用した、屈折した殺人犯とか、IT系の知能犯とかの役にチャレンジしていかないと俳優としてはそんなに長続きするとは思えないなぁ。固定されたイメージをそのまま受け入れてくれる主演映画のオファーは、もうこないと考えたほうがいいぞ、と思わせるガッカリ映画「ガリバー旅行記」でした。