スタジオジブリ物語を見て…

日本TVで放送された「スタジオジブリ物語」は面白かった。しかし、あれでは短いとも感じてしまう。それだけこのスタジオはあらゆる側面から語る事が出来る、多面性を持った映像工房なんだろうな、と思った。事前の番宣で渡辺謙がナビゲーターを務めることは知っていたが、まさか蒼井優まで出てくるとは思わなかった。

番組が作品として本気を出している証拠は、その二人を収録するキャメラが結構凝っていることで分かった。蒼井を映し出す画面の脇のソフトフォーカスは普通使わないでしょ。謙さんの歩く床に水撒くんだ(あれは本物?CG?)!このナビゲーターが居ることによってNHK的な作風にならなかったこともよかった。

個人的な宮崎駿体験はかなり遅いほうだと思う。映画は「となりのトトロ」から。もちろんロードショーの「火垂るの墓」との2本立てだった。若い世代(ジブリって映画館で再映しないからねぇ)は、この2本立て興行を知らない世代。教えると「マジっすか?」と驚き、また組み合わせに違和感を示すのだった。かたや終戦直後の日本における戦争孤児の悲劇。かたや所沢あたりの懐かしい日本の風景の中のファンタジー、その違和感仕方ないかなぁ。

実は2本立ての個人的メインは「火垂るの墓」だった。野坂昭如の文学としては知っていたし(読んではなかった)、およそアニメーションにふさわしくない題材というのにも興味があったのだ。また高畑勲という監督名は、すでに「柳川掘割物語」(これをちゃんとキネカ大森で見てるんですねぇ)で馴染があったという訳。

要するに、それまで「〜カリオストロの城」も「ナウシカ」や「ラピュタ」も名前としては知ってはいたが、“どうせ、アニメでしょ、実写で出来ないだけでしょ”という偏見の塊であった。よってTVアニメで活躍していた頃の宮崎さんも知らず、このパッケージビジネスの世界に入って初めて分かったのだった。それでも「未来少年コナン」や「アルプスの少女ハイジ」のソフトって、なんで売れるんだろうと不思議がっていたのだった。

という訳で初体験の「トトロ」に驚愕し、以来ジブリのアニメは普通に見るようになった。作品の完成度という点で言えば「千と千尋の神隠し」がTOPか?メッセージ性の強さは「もののけ姫」だろう、しかし最も好きな作品はやはり「トトロ」だな。今でこそ、黒澤監督以上に海外の映画人にリスペクトされる宮崎監督だが、アメリカで「もののけ姫」公開される以前は知る人はいなかったろう。

ちょうど日本で公開の前にアメリカに行く機会があり、MGMスタジオの人間に『今年の夏のNO1ヒットは日本でも「ジュラシック・パーク2」だろう?』と言われ『NO、ナンバーワンヒットは「プリンセス・モノノケ」だ!』とやり返したら『?』という顔された。もしかして一番最初に外人に「もののけ」教えたのはこの私か??その後「千と千尋〜」のオスカーで、その時の言葉はすべて証明されんたんじゃないだろうか。

スタジオジブリ物語」の見どころはジブリが出来る前の、若き日の宮崎駿高畑勲の情熱の日々が垣間見えるところだった。それは日本の(アニメも含む)文化そのものの変化の時代がバックにあり、その先頭に立っていた事がよく分かるのだ。そこから産まれたジブリは、ようやくオヤジにも見られるアニメではなく、映画を生み出してくれたのであった。

借りぐらしのアリエッティ」が作られ、ようやく後継者のメドも立ちつつあるようだ。まだ25年ほどのスタジオである。ディズニーは「白雪姫」から数えても70年!もうしばらく応援していくしかあるまい!