「不倫純愛」は前作の敵討ち?

“元グラビアアイドルが遂に脱いだ!大胆な愛欲描写に話題騒然!”としか紹介されないであろう映画は、嘉門洋子主演の「不倫純愛」だ。確かに劇中の津田寛治との官能的なラブシーンは大いに話題になっていいと思うほど、見応え十分な場面で『うぉ〜、しっかりしたロマンポルノになっているじゃん!』と思わず唸ってしまった。

ある小説家が執筆の題材として、雑誌の編集長にしかけた危険なラブゲーム。小説家の恋人(彼の小説の登場人物でもある)が編集長に近づき、不倫関係となる。その愛欲の模様は恋人の報告を受け、小説となっていく。一方、小説家のほうでは、編集長の奥さんに近づき、肉体関係を迫るのだが…。

宣伝文句では“ファム・ファタール”ものとしているが、嘉門扮する主人公は、真剣に編集長も小説家も愛するという点で、運命の女というより、愛に飢えた女という感じだ。また監督の矢崎仁司のお気に入りの女優(でしょう、たぶん)中村優子が編集長の妻役で、やはり魅力を振りまく。こうした揺れ動く女性心理を好んで題材にしているのが矢崎監督なのだ。

実は嘉門さんばかり注目されるが、この映画に興味を持った最大の要因は矢崎監督。なぜなら前作の「スイートリトルライズ」があまりにも不完全燃焼の感があったから。「ストロベリー・ショートケイクス」で見せてくれた女性心理とエロスが見ごたえがあり、「スイート〜」にも期待したのであるが、どうにもノレなかったのである。

「スイート〜」も夫婦のW不倫の映画だ。友達のような関係の夫婦が、それぞれに不倫関係となる相手を持ってしまうという内容だ。製作発表された時点では、かなり激しいラブシーンが展開されると伝わってきたのであった。しかし本編を見てガッカリの描写。あまりにもお座なりであり、大人しいではないか!ここからは私見であるが、やはり主演女優側から結構な規制があったのではなかろうか。そして、それは監督の本意ではなかったと予想する。

矢崎監督は「スイート〜」製作で溜まったストレスを、嘉門洋子の肉体におもいっきり吐き出したとしか思えない、見事なワンカット、長回しのラブシーンであった。ここに矢崎仁司の前作への敵討ちが完結したと断言したい。そして、嘉門洋子を起用して、もう1作作っていただきたいと願うのだった。