デジタル上映、真っ盛り!

22日封切りの新作で、相当な観客動員になりそうな予感の映画がTOHOシネマズ六本木をメイン館とした「ドキュメンター・オブAKB48」だ。ファンには堪らない魅力的な作品に仕上がっていたし、映画ファン側が見ても、総合プロデュースの岩井俊二タッチが入っている映像を楽しめる(監督は岩井さんの弟子の寒竹ゆり、すいません初監督作の「天使の恋」見逃しました)。

主要メンバーの2010年に密着&インタヴューで構成された、このドキュメンタリーは、芸能界という大きな学校の中のAKB48という部活に一生懸命になる少女たちを見つめ、中途半端なファンでも、“いいねぇこの子たち、応援したいよなぁ”と思わずにはいられない。更に秋葉原の拠点である劇場へのこだわりや、一期生の意地、後輩たちへの思いといったTV画面では見られない面に興味深々となった。

この映画の配給は東宝映像事業部。本家の映画配給会社の東宝ではなく、パッケージを主体としたコンテンツビジネス部隊だ。少し前にはミスチルのドキュメンタリーも配給公開した。その事業部が製作(ミスチルは出来ていたもの映画館にかけただけ)担当した映画が「〜AKB48」だ。そこで疑問に思うのは、同じ東宝という映画会社に、なんで二つの配給網があるのか?簡単に言うとフィルムビジネスが本家東宝でデジタルコンテンツが事業部という別れ方をしている訳だ。

では、なぜそれだけデジタルコンテンツが幅を利かせるようになったか?それは、受け皿であるハード(映画館ですね)に必要なソフトが求められているからだ。それが今のシネコンの時代で、どのスクリーンにもデジタル撮影された素材をかけられるようになっている。当然普通の映画だけではもったいない、TV的なものでもビッグスクリーンでかけられ、見るに耐えるものであれば、ビジネスになるという訳だ。

新宿バルト9新宿ピカデリーの両館は頻繁にイベント的にデジタル(主にライブもの)上映をしていて、東方神起浜崎あゆみぺ・ヨンジュンのライブから、そのぺさんの「太王四神記」のTVドラマまで様々だ。ぺさんに並ぶ韓国の人気俳優のイ・ビョンホンも負けてはならぬと、先日までTBSでオンエアしていたTVドラマ「アイリス」を総集編にして上映してしまった。まさにデジタル上映設備のなせる技だ。

まあ、当然ではあるが、TVで「アイリス」は見ていない。予告編の映像を見る限り、韓国お得意のアクションとラブロマンスをごった煮にしたような印象だったが、ほぼその通りだった。しかし意外や、物語のプロットだけに編集されたシンプルなものになっている分、見れましたな。要するにお話ではなく、ビョン様のアクションPVで良い訳だからカッコいい場面ばかり。

それでも一応ストーリー的なるものはあり、ビョン様は韓国側の工作員スナイパー。同僚の彼女と友がいるのだが、北の要人暗殺を決行後、友人を含む国家そのものに見捨てられ、逆に狙われるようになる。北側にも狙われるのだが裏切られたビョン様は北に寝返り、裏切った国家に復讐を誓う、的なもの。ラストの街中での銃撃戦は「ヒート」顔負けの迫力でビックリ、日本の刑事アクションものとは予算の掛け方が違うよなぁ。

なぜだか、秋田に彼女と来ていたことがあったので、逃亡の果てに秋田に逃げた彼をかくまうのが日本人のユキ。彼をおにいちゃんと呼ぶがその関係性はちっとも分からん(そこがダイジェスト!)。しかしここで嬉しいキャスティング。このユキという少女を演じているのが、なんと美山加恋ちゃんではないか!5、6年前に「僕の〜」シリーズの凛ちゃん、実写版「ちびまる子ちゃん」のたまちゃん役を演っていたのに、まぁ〜、大きくなったしまったこと(「ギルティ」にも出てたらしい)!

ところで、このお話の国家に利用され捨てられるスナイパーって物語、どっかで見たことあるなぁと思ったらスティーブン・ハンターの傑作小説「極大射程」じゃないか!この小説を映画化したのがマーク・ウォールバーグ主演、アントワン・フークア監督の「ザ・シューター/極大射程」だ。ボブ・リー・スワガーという名の心に傷を抱えたスナイパーはなんと魅力的なキャラクターだったことか!しかし、それは小説の方のことで、映画版は、その『心の傷』の部分が薄くなっていて残念だった。

そうした面白い題材は似ていようが、なんだろうがお構いなしに作る韓国エンタメは大いに勉強になりますよ。また、今後もこうしたデジタルでの上映は韓国TVもので増えるのだろうか、と思わせる総集編でした。