黄金コンビ!トニー&デンゼル!

兄貴のリドリーがラッセル・クロウをお気に入りの俳優として起用するのに対抗するように、弟のトニー・スコットデンゼル・ワシントンと相性が良いようで新作「アンストッパブル」は(記憶が正しければ)5回目のタッグだ。95年の「クリムゾン・タイド」から始まり「マイ・ボディガード」「デジャヴ」「サブウェイ123激突」ときて今回だ。

そこまで組んできたら、もう、いわゆる『あうん』の呼吸というレベルにあり、今回も安心して楽しませてくれる一編だった。今、発売中のキネマ旬報の2月上旬号でも、敬愛する映画評論家の森卓也氏が“人に勧められる、普通に面白い、見ごたえのある映画”と紹介している。その通りなのだ。そしてその普通に面白いが、実はとても難しかったりしているのが今のアメリカ映画だったりする。

クリムゾン・タイド」の頃はデンゼルのほうが若手だったが、今では立場が逆転、デンゼル扮する老練の機関士に対しクリス・パイン(この役者は「スター・トレック」もそうだったけど、突っ張る若者役が似合うようで)という構図。クリスはデンゼルを解雇する替りに(本人は知らない)雇われた新人機関士。その二人が暴走する無人機関車をどう止めるか、という単純明快なお話。

映画の前半では、それぞれの人生に問題を抱えている二人は、対立を繰り返しひとつの列車の機関士と車掌になっていない。しかしデンゼルが奥さんが死に、二人の娘が『フーターズ』でウェイトレスしながら学費を稼いでいる、と告げる場面から二人の距離が縮まる。クリスが“えっ、あのフーターズで?”と聞けば、デンゼルは“何照れてるんだ、そうだよ、あのフーターズだよ!行ったことあんだろ!”と突っ込む。

そう、フーターズこそ、昨年待望の日本上陸を果たした、アメリカンレストランで、アメリカの健全な男子たるもの(勝手に思っているだけだが)必ず一度は行ったことがあると言っても過言ではないパラダイスのようなレストランだ!赤坂にオープンしてから連日満員で、いつか行きたいと思っているのだ。

話はいささか横に逸れたが、この映画がうまいところは、この何気ない会話から、エンジンがかかり二人が町のHEROになるまでの、後半の一気呵成の展開だ。トニー・スコット得意の早いカット割りでアクションにテンポを付ける。アクション映画であるがゆえに、大嫌いなキャメラの揺れも気にならない。そう、スコット兄弟以降の監督たちは、この二人の細かいカット割りアクション演出を参考にしているのだが、これが良い影響と悪い影響のふたつを産んでいるのだ。

ポール・グリーングラス監督は、そのスタイルで成功したほうの例と言えるだろう。「ボーン」シリーズで確認できますね。ところが、これが2007年の韓国映画「セブンデイズ」(キム・ユンジンさん美しい)となると、ただ単にキャメラ振り回し、意味なくカット割り、と見にくいだけの画面になってしまっていて辟易した。

アクション映画ではないが「バーレスク」もその大失敗例。ソング&ダンスのシーンを細かくカットを割ること自体、演出家の自信の無さの表れで無惨極まりないのだが、腹が立つのはシェールのキチンと芝居の場面でも画面がちっともフィックスせず、ユラユラと無意味に揺れていることだ。フィックス画面でのカットの切り替えしで、芝居を見せることが出来ない監督が多すぎるぞ!

暴走する列車を停止しようと活躍することで、抱えていた問題が解決してしまうというアメリカ映画お決まりのパターンではあるが、それがハリウッド映画では必要なラストシーンなのだ。トニーとデンゼルは、それを職人芸の域できっちりと見せて楽しませてくれるだ。