台湾映画の力作「モンガに散る」

何ヶ月か前のことだった“気に入ってもらえると思いますので、絶対見てください!”という配給会社の人からの案内を受けた作品が「モンガに散る」だった。そもそも韓国、中国、香港、台湾といったアジア圏の映画にあんまり思い入れはない。韓国の作家性の強い作品は見るが、いわゆる韓流はちょっと。チェン・カイコーチャン・イーモウで止まっていると言ってもいいかもしれない。

多くの30〜40代の男子が熱く語る「男たちの挽歌」シリーズも(というよりコメディ&アクションの香港全般)見ておらず、ヒンシュクを買ったりしております。当然、ジョニー・トゥも全然で、結局のところ香港ではジャッキー・チェンだけか?

よって台湾と言われても、今だにホウ・シャオシェンになってしまう。そんなのだから台湾で大ヒットした作品と言われても、あまり気乗りがしない状態で「モンガ〜」を見てみた。そして驚いた、力作である。かなりの技量のある作品だ。

話そのものは、高校で出会った5人の不良が、やがてチンピラになり、極道となっていくというシンプルな青春群像劇なのであるが、その5人の描写の瑞々しく好感が持てる。主人公となるのは元々不良ではなく、友達がいなかっただけの孤独な青年。その青年をイジメから助けて仲間に入れたのが地元の極道の息子。その息子を(この部分が隠れたゲイ描写)深く想うNo2、その3人を中心に新興勢力の極道とモンガという昔ながらの土地の極道の抗争に巻き込まれていく。

配給会社の人は『日本版「ドロップ」ですよ』というが、それは上っ面の見方でしょ。むしろ、この根っこは韓国映画「チング」じゃないの?仲間でありながら、裏切らなければ生きていけないという哀しみの部分は、日本以上にお得意ですよね。また強い絆(かつての東映仁侠映画にあった)で結ばれた男と男は相変わらずその展開、“好きだよなぁ”と感心してしまう。

だから結局それが「男たちの挽歌」への思い入れとなっていくんだと、ちょっとだけ分かりましたね。見てないけど…。

主人公の青年が好きになる顔にアザのある娼婦役の女優さんがよろしいなぁ。初めて女郎屋に来て女の子を抱かない青年(童貞ですね)が、となりの部屋のあえぎ声を遮るためにウォークマンのイヤホンをふたりで分け合って聞くというベタな場面が意外とよく、日本映画がとっくに恥ずかしくて描けなくなった青春像をストレートに見せたことが成功の要因。

しょうがないから、今度は韓国版「男たちの挽歌」にチャレンジしてみようかねぇ。