連続TVドラマの新作の2本のこと

新年が明け、連続TVドラマも衣替えとなり新作が登場となった。その中の(というより、2か、3本しか見られないが)2本について、ちょっと気になったことを一言だけ。その2本とは今年のNHK大河ドラマの「江」とフジTVの「外交官 黒田康作」。

2010年の「龍馬伝」とどうしても比べられてしまう「江」ではあるが、戦国時代のお姫様物語という、時代的に前作と違うことと、演出技法が大友啓史とは全く異なるであろうと予想していたので、それほど拒否するものではない、従来の大河ドラマパターンものとして、楽しめそうな展開が期待出来る第1回となっていた。

誰しも最初に主役を演じる上野樹里が時代劇を演ることに、不安を感じていたと思うが、それは第2回目以降で確認することになった。なぜなら1回目はまだ江が産まれてまもない時の話だったから。長女である茶々(大きくなると宮沢りえが演じる)が、これから産まれてくる江を産まないとするお市の方に『産んで欲しい』と迫る場面が1回目の山場となるのだが、この茶々を演じるのが芦田愛菜という子役。

CMとかでかなり有名なので、多くの人に認知されているだろうが、この女優(あえて子役でなく、そう呼びます)の計算されつくした演技に、ものすごく違和感を覚える。場面をさらうことはすれど、作品を活かすことには決してなっていないのだ。なんかこういった演技をすれば演出家が喜ぶだろうという(大人でもそう出来ないのに)芝居なのである。その場面でも面目躍如の演技は見せるのだが、作品に溶け込めず場面を壊してしまったのだ。これは彼女が悪いわけではなく起用した大人が悪いのだが…。

その場面をさらって、作品を活かしたほうの例が「外交官 黒田康作」の中で登場するイ・ビョンホンだ。豪華ゲスト出演で登場するのであるが、その英語の達者ぶりから、潜入捜査官からスーツ姿への変身の場面から、もう彼が登場すると織田さん霞んでしまっていますよ。その場面のさらい方が、この作品のスケール感を高める結果となっているのだ。この起用は大正解!

話そのものは、黒田だけでは話が狭くなるので、空間認識に秀でた(捜査マップを作ることだけは誰にも負けない)新人女刑事である柴崎コウをキャスティング。このバランスもよいし、彼女の役柄もいままでにないオットリした(しかし刑事としての才能は、実はある)女性で魅力的だ。スターだけ起用出来れば作品は完成するものでは当然なく、相手役、脇役に至るバランスが必要なのだ(特にTVドラマは、と思っている)。

そのバランスの悪さが「江」の中にもひとつあって、徳川家康演じる北大路欣也の存在感が他を圧倒してしまっている点。「篤姫」の時の勝海舟役は、宮粼あおいの演技をキッチリ受けてくれバランスがよかったのだが、今回は登場するたびに圧倒的に時代劇の演技の質の違いを見せつけてしまうのだ。

とは言え2本とも(「江」は年間だが)2011年前半は楽しませてくれそうなので、ちゃんと見ていこう!