「シュレック」シリーズが残したもの

ディズニーをクビになって辞めた、ジェフリー・カッツエンバーグはスピルバーグらと立ち上げたドリームワークスで、「シュレック」をヒットさせたことで一矢報いた感があったであろう。ディズニーに対する恨みは、いかばかりか知る由もないが、ディズニーが得意とするお伽話の世界を茶化してみせ、ちっとも可愛くない緑色の怪物シュレックを主人公としたアニメが大ヒットしてしまったから、痛快であったことは確かだろう。

しかし、それはアメリカでの話。日本ではやはりこの手のシニカルなキャラクターは受け入れられるはずもなく、そこそこの知名度はあれども、また話がどれだけ面白くとも(「シュレック2」の映画ネタのパロディは面白い!)大ヒットにはほど遠く、この度「〜フォーエバー」で終わりを迎えてしまったのだった。

そもそもドリームワークスアニメの第1作目の「アンツ」からして、同時期にぶつかったピクサー(当時は配給協力ディズニーという形のパートナー)の「バグズ・ライフ」と比べてみて歴然としていた。キャラクターが可愛くないのが特徴なのだ。そのため「シュレック」の大ヒットまで多少の時間を要したが、怨念がゆえの製作の継続をしていきましたな。他の会社なら(どことは言わないが)製作一旦中止したと予想しますよ。

それでは「シュレック」の登場はアメリカ映画界に何をもたらしたのか?単に一企業のアニメ作品のヒットに終わらないものをもたらしていたのだ。それは“ディズニー何するものぞ!”の精神だ。それまでアメリカ映画のアニメはディズニーのお山の大将状態で、一人勝ち。それが「シュレック」が2001年に登場するや、翌年にはFOXが「アイス・エイジ」をヒットさせる。「アイス〜」は全世界で見事な興行収入を記録する(特に3)シリーズとなる。

要するに、面白いものをちゃんと作れば、ディズニーにだって対抗できるという自信を得たのだ!

遅ればせながらユニヴァーサルも、ようやく「怪盗グルーの月泥棒」をヒットさせ、アニメ部門でもビジネス出来るようになってきた。2010年度のアメリカの興行成績ベスト10には「トイ3」に負けるな、とばかり「怪盗グルー〜」「シュレック フォーエバー」そして「ヒックとドラゴン」とランクインしているではないか。それも、すべて「シュレック」という作品があってこその競争原理が働いた結果ではなかろうか。

「〜フォーエバー」もキッチリ出来ていますよね。怪物であるがゆえにシュレックは、冒険もしたいし、恐れられたいという願望は家庭を持ってなお消えないという設定で、いわゆるミッドエイジクライシスのパターンで描く。魔法の誘惑にかられたシュレックは過去の世界に閉じ込められ、そこから脱出するには、フィオナやドンキーと最初に戻っての関係構築をしなければならなくなる、という結構複雑な展開だ。

ディズニー/ピクサーが「カーズ2」や「モンスターズインク2」といった続編頼みになって来た感がある。ドリームワークスは「シュレック」シリーズに見切りをつけた訳なのだから、新たなキャラクターでヒットを狙ってもらいたいねぇ。

あくまで、アメリカでの話ですけど…。