圧巻!「ロビン・フッド」

昨日の森田監督もそうであったが、自分の映画歴と同時代で登場して今も作品を精力的に発表し続けている海外の監督では、リドリー・スコットもその一人だろう。見逃している作品は「GIジェーン」と「プロヴァンスの贈りもの」の2本だけという高打率だ(他にはスピルバーグですな)。

やはり、堂々と好きな監督と言おう。新作「ロビン・フッド」を見て本当に素直に言えるなぁと思ったのでした。もちろん「エイリアン」の旧有楽座で見た衝撃は忘れられないし、ガラガラの新宿ミラノ座で上映されていた「ブレードランナー」も(見ている最中、フィルムが切れた場面にも遭遇)リアルタイムであるが、そんなにゾッコンというほどではなかった。

CM出身ということで、いわゆるスタイリッシュな映像が優先して演出という点では、どうなんだろうと思った時期もあった。「ブラックレイン」だって結構いいかげんな映画で、マイケル・ダグラスのスター映画を優作が救ったというところじゃないのかな。

そんなリドリーが大きく変わったのが「グラディエーター」からだろう。必要とするCGを巧みに利用したスペクタクルな場面をスタイリッシュではなく、真正面から描いてみせたところが転換期だ。キャメラをアクション場面の真っ只中に入れてみせる手法は他の追随を許さないうまさだ。ただ、そうするといささか作品が偏り、「キングダム・オブ・ヘブン」で再度スペクタクル史劇を作り、今回が「ロビン・フッド」ときた。

メル・ギブソンに「ブレイブハート」があり、ケヴィン・コスナーに同タイトルの「ロビン・フッド」があるのだから、今更もう一度という感が見るまではあったである。

ごめんなさい、参りました。これはリドリー・スコットにしか撮れません。また、なぜ再三ラッセル・クロウを起用して映画を作るのか、食傷気味でありましたが、このラッセルだったら文句ないです。まあ、今回はラッセル側(製作総指揮もやっている)からのオファーとのことなので、過去4回とは違うコンビの経緯か。

イングランドに伝わるロビン・フッド伝説を、一人の男がその伝説のヒーローに、いかにしてなったかの前日談の物語を直球勝負で見せてくれる。脚本はブライアン・ヘルゲランドという一流どころにまかせているのも大成功。中世のいささか敬遠しがちな難しいと思いがちな話を実にシンプルにわかり易くして誰でも楽しめる作りだ。

そして画面をしっかりと据えてドラマを撮る時と、シネスコ画面でアクションはこう撮るんだ、という時のメリハリの良さ、引きの画面をしっかり入れ、本当に画面の骨格がしっかりしているから見やすいのだ。キャメラを動かしながらカットをたくさん割れば、テンポのいい映像(それをMTV映像と言うんだよ!)が出来ると勘違いしている凡庸な監督が多い昨今、やはり巨匠は違ったのだ!

この、ど真ん中の剛速球のストライク、これぞ大作である!