若尾文子、絶賛!!

10月2日から22日まで神保町シアターで特集上映されたのは『若尾文子』。どこの日本映画を特集上映する映画館でも若尾さんの特集は人気があるのだろう。本当に定期的に番組が組まれている。毎日でも通いたかったのだが、それは無理というもので結局最終日の最終回の上映作品「瘋癲老人日記」にのみ駆けつけた。

入り口で『チケットまだの方ぁ〜』というので『1枚くださいな』と申し出ると『はい、あなたが99番目のお客様です。これにてチケット完売です!』となってビックリ!ギリギリセーフでした。すっごい人気ですなぁ〜。そして番組そのものも人気なのであった。それは映画をみれば分かること。

「瘋癲〜」のタイトルは知っていたものの、これほど明るい変態映画とは思わなかった。谷崎潤一郎の原作もそうなんだろうか?今度図書館で借りてみよう。

主人公は富豪の老人(山村聡)とその息子の嫁(若尾)。もう老人は片腕まひの状態であり心臓も弱っているのに、まだ生きていると医者もおどろく状態。なぜ生きていられるか?それは性への固執である。不能でありながら息子の嫁に好きなものを買ってやって、その見かえりに美脚を触らせてもらう日々。

その老人と嫁の明るい変態ぶりに場内には笑いが起きるほど。もちろん若尾さんの色香に老人だけでなく、こちらもノックアウトである。要するに老人に自分の美脚などのぎりぎりの露出を観客にも見せつけてしまうという大変分かりやすい構成ですな。

今でもソフトバンクのCMでお美しい姿を見せてくれているが、この映画の若尾さんは筆舌に尽くし難いというしかない美しさだ!いやらしさだ!この嫁の傍若無人ぶりには老人の妻(東山千栄子)もなすすべがなく、実の娘たちもかなわない。なぜなら老人を生かしておけるのは映画の中の若尾さんだけだからだ。それを登場人物全員が分かっているわけだ。

そうなると実の息子も、外で女作るほうが気楽ときて川崎敬三扮する息子は会議と称して外出ばかり。そうした偽装の家族であるが、老人の性への執着だけは正直という皮肉がこめられているのだ。

監督の木村恵吾は大映の「狸御殿」シリーズで知られた人だが、こんなフェティッシュな乾いた現代劇を作っているとは意外だった。まだまだ50年代の黄金の大映映画の作品群をちゃんと見られていないということに尽きるなぁ。

また、こうした若尾さん特集上映、どこかやって下さい!!