トムVSスライ、俺様合戦に拍手!

先週から封切られた「エクスペンダブルズ」当たっているとのこと。大変喜ばしいことである。その前に始まっている「ナイト&デイ」もちゃんとお客様を集めているとのこと。これまた嬉しいニュースではないか!なぜ嬉しいか?それはこうしたアメリカ映画がヒットしてこその洋画興行であるし、なによりスターの魅力で当たったことが、久しくなかったからだ。

今やジョニー・デップ以外、興行的価値がある俳優はいない、とまで言われるほどハリウッドスターの集客力は低下の一途である。80年代に遡れば、スライ(スタローンの愛称ということはしっていますよね)とシュワに代表される肉体派アクション俳優の作品はヒットの法則を持っていた。またトム・クルーズに代表される美男子スターも、しっかりした共演者を得て(「レインマン」のホフマン「ハスラー2」のニューマン)、アクション抜きでもヒット作を産んでいた。

そうした失われたと思っていたアクション&スターという構図での久方ぶりのヒットが、この2本というわけ。だから嬉しいのだ!

「スペースカウボーイ」でイーストウッドの一声で、ジェームズ・ガーナードナルド・サザーランドトミー・リー・ジョーンズがすぐに集まったように「エクス〜」ではスライの一言で50代以上となった肉体派アクション俳優たちが集結した、その連帯感が嬉しいな。やはりスライは根っからの映画屋だと納得できる、その映画に向かう姿勢が素晴らしい。CGアクション全盛の時代だからこそ、反骨精神ありありの肉体アクションに泣けるのだ。

一方トム・クルーズはインタヴューでも答えているが、常に観客をエンタテイニングすることを心がけていることが素晴らしい。「MI」シリーズを始めてからいささか『俺様』の姿勢が悪く捉えられ、また「7月4日に生まれて」や「マグノリア」などでオスカーに近い位置にいるにも関わらず、出演のギャラの優先のような作品選択でバッシングを受けたが、本当はこれほどピュアな俳優はいないのかもしれないぞ!

「ナイト〜」はキャメロン・ディアスのキャスティングにも成功の要因はあるが、そうした化学反応を起こそうとする製作姿勢がトム様にあるから面白くなったといえるだろう。こうしたスパイアクションはなんかいかにも80年代によくあったタイプだろう。それと肝心なことは、「バウンティハンター」の公開のときに感じたスター依存の映画にありがちな物語の展開の停滞感が、この映画にはないことだ。アクションが進行していきながら、主役二人の距離が縮まるロマンス風味がちゃんとあることだ。

これは恐らくトム様がそのことが分かっているのと、監督のジェームズ・マンゴールドの手腕によるものだろう。「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」の名演が記憶に残るポール・ダノと「17歳の肖像」のピーター・サースガードという脇への目配せも出来ている。ダノがお気に入りのホール&オーツのネタなんかも80年代オマージュと見てもいいんじゃないかな。

トムにしろ、スライにしろ、そうした俺様たちが居てこそ気骨ある映画が出来上がっていくのだ。アメリカでの成績は「エクス〜」の圧勝で、続編も期待されるが決して「ナイト〜」だって悪くないのだ。プロモーション来日したその日一日、トムが撮影を中断していた「MI4」に大いに期待してもいいんじゃないかなぁ。

トム&スライのエンタテイメントなアクション映画作るなら“俺様だ!”の火花の散らせかたはアメリカ映画を救うひとつの要因だと断言できる。