昭和の名優たちの死

友人S氏から電話で24日(日)に東京會舘で『小林桂樹さんのお別れの会』が開催されると聞く。なんだか会の発起人に名を連ねていて実務をこなさなければならないとのこと。まあ、実務は若い奴がやらなきゃならんでしょ。でも電話をもらって改めて名優の死を実感したのであった。

と思ったら10月8日に池部良さんも亡くなっていたことが報道されてビックリとなった。両名とも自分の年齢からしてリアルタイムの俳優ではないが、邦画をちょこっと見ていれば必ず出会う昭和の名優なのである。

思いつくままに作品を振り返ってみることにしたい(といっても見ていない作品のほうが圧倒的に多いのだけれど)。

おそらくリアルタイムで小林桂樹(ここからは敬称略というやつで)の作品を見たのは中学生の時の「父ちゃんのポーが聞こえる」だろう。吉沢京子が好きで(もちろん一番は和歌子さんですが)見に行って号泣させられた映画。白血病の娘と機関車運転手の父との物語。娘は病院の窓の外から聞こえる父の運転する機関車の汽笛を聴きながら死んでいく。松竹からDVDが出たばかりの「RAILWAYS」の原点ですな。この父が小林桂樹

次に見たのが東宝8・15シリーズの「軍閥」。これで東条英機を演じていて写真で見る東条にそっくりだったので驚きましたね。しかしその頃は社長シリーズも見ることはなく、ず〜っと後になって司葉子さんとの夫婦役なんかに、ようやくニコニコしたのであった。素晴らしかったのは「椿三十郎」の押入れの侍ですな。この可笑しさは小林さんでなきゃ出せませんですよ。

先日ようやくに森繁追悼という企画で今まで出ていなかった社長シリーズが、やっとDVDで発売になったが、皮肉なことに小林桂樹追悼発売にもなってしまった。今後行きつけの名画座で特集上映があると思うので膨大なフィルモグラフィーを少しでも埋められればと思っている。

池部良が亡くなってのTVの報道は(TBSの朝の情報番組でしたが)なんという簡単で味けないものだった。映像が出たのが「青い山脈」だけというものに大いに不満だった。確かに代表作で、このとき池部はなんと31歳で高校生を演じているユニークさを語るには良いだろうが、俳優としてはその後の魅力ある役柄に触れてほしかったのだ。

その代表作の1本が「乾いた花」の」現代やくざ。加賀まりこという女優目当てに行って男優に見とれて終わった映画はまことに珍しい(その逆は数え切れないほどあるが)。そしてその後登場するのが東映で出演した「昭和残侠伝」シリーズの風間重吉役だ。
高倉健演じる花田秀次郎とともにラストに敵役のやくざへ殴り込みに向かうシーンでの「ご一緒願います」の台詞こそは背筋に戦慄が走るという名場面名セリフ!!

もしTV報道でやくざ役を取り上げることがまずいのだとしたら、高倉健さんや、菅原文太さんがもし亡くなったら、どう報道するのだろうか?その役抜きにはその人物は語れないでしょう。池部さんの風間役はそれに匹敵しているというのに!!この時すでに池部さんは50代、本当に若々しかったし、カッコよかった。こういう美男子のみが映画俳優になれるのだ、という時代をもっともよく体現していた俳優が池部良だったかもしれないなぁ。

これまた続々と名画座上映があることを期待しよう!!!