リスベットにゾッコン!

ミステリー小説ファンなら、ず〜っと前から知っていたのでしょうが、こちとら映画化されてから知ることばかりなので「ミレニアム」シリーズ第1作目「〜ドラゴンタトゥーの女」も公開された本編を見てみて、ようやくリスベット・サランデルという魅力的なキャラクターと出会うことになった。

そもそも第1作目は「〜ドラゴンタトゥーの女」とリスベットの代名詞を掲げていながら、彼女はかなり経ってからしか登場しないで、序盤はミカエル・ブルムクヴィストというジャーナリストが主人公で大富豪の娘の失踪事件を探り活躍する展開だ。その捜査の手助けをする女調査員&天才ハッカーとして上映時間がだいぶ進んだところから登場し、場面をさらってしまうのである。

痩せていて(当然おっぱいなんかもない)決して美人じゃなく、その上愛想もなく、竜の刺青(日本流に言えば)だけでなく、耳と鼻にピアスジャラジャラで、バイクを転がし、おまけにレズというとんでもない女性なのだ。それが映画の後半ではミカエルとも愛し合い、誰しも“この女カッコイイじゃないか!”と思ってしまうのである。

まあ、ミカエルには雑誌『ミレニアム』(ミカエルはここの剛腕ジャーナリスト)の女編集長という愛人がいるので、恋愛に発展はせず、友情という以上の絆が2作目以降にできるという展開。よって2作目「〜火と戯れる女」ではリスベットが完全に主人公となる。そのためミカエルと女編集長は脇に回るのだけど、その部分の描写が弱いので、ふたりや警察がなんの役にも立たない無能な存在の印象が強くなってしまった。

最大の見せ場はロシアのスパイであった実の父との決闘を前にした金髪の(これが腹違いの兄という韓流顔負けの展開!)大男の殺し屋に捕まって、それをレズの恋人と知り合いのプロボクサー(こいつが2作目のヒーローだな)に助けられる場面だが、ここに警察もジャーナリストもなく、あとはリスベットたったひとりの奮闘だ。これにゾッコンとならないってほうがおかしいでしょ。

3作目の「〜眠れる女と狂卓の騎士」(なんかハードなハリーポッターという感じのタイトルだなぁ)となるとリスベットは2作目で傷ついたため病院にいる。展開は『ミレニアム』編集部がどうやって告発記事を発表して彼女を助けるかとなるが、これまた女編集長が作品の弱点となってしまう。要するに告発系の硬派な雑誌を出すという気概みたいなものが全く見えない編集長となっているのだ。脅迫メールが着た瞬間に、編集部隊をアンダーグラウンドに隠すなり、盗聴に気をつけたりするでしょ普通。

結局、リスベットのハッカー仲間である“疫病神”がロリコンの精神病院の医院長のパソコンに侵入して証拠を獲得して無事法廷に立っていたリスベットを救うのだが、だったら最初からハッキングすれば簡単じゃんと思わせる映画としては稚拙な展開。しかしすべてリスベットというキャラクターが隠してくれるのだ。

病院の担当医とのさりげない交流の部分は良く、法廷に彼の姿を入れてほしかったな。よくできた外国映画にある、ハリウッドでデヴィッド・フィンチャーでリメイクという噂も聞くが、その時のキャスティングは?と思うとこの役はノオミ・ラパスというこの女優にしか無理なんじゃない?である。

ともかく最後に金髪大男との対決や、謀略組織一斉検挙の場面とか、ハリウッドならもう一工夫あるだろうな。しかしベルイマンやハルストレムぐらいがスゥエーデン映画だと思っていたら、こんな劇的展開の映画もちゃんと作れるじゃんという新しい発見の映画であることは事実ですね。

リスベット・サランデルだけの、いわゆるスピンオフって有りですよね〜。