新東宝の女優さん!

映画の歴史をキチンと勉強する前、新東宝という会社のイメージは、一言で現すならば、『エッチな映画を作っている会社』だった。その会社が、戦後の東宝争議をきっかけとして産まれ、高峰秀子さんも名を連ねた東宝を離れたスター達で作られた会社、そして良質な文芸作品を生み出し、一時代を築いたと知るのは後になってからだった。

まあ、映画をかじり始めの小僧たちには、その後の大蔵貢という経営者に変わってからの、アクション&お色気路線(ホラー系も含む)の方がインパクトがあるに決まっている。さらに決定的なのがその後のピンク映画路線になっての街の片隅にあった看板の存在。

荻窪のオデオン座(だったかなぁ、記憶違いだったら申し訳ない!)の前を通ることが多く、そこにはいつもピンク映画がかかっていた。小学校5年ぐらいだったろうか?その看板には『新東宝』とあり、そこから認識して“お色気路線の延長でピンク映画になったんだ”がすべての始まりだった。

今は無き伝説の映画館、大井武蔵野館で特集上映された文芸作以外の新東宝作品に多くの観客が駆けつけ、再評価のきっかけになったという現象は認識してはいたが、それは自分より1世代上の方たちへお任せという感じだった(でも、結果乗り遅れたんだけどね)。

よってTVで活躍されていた久保菜穂子さんも、三ツ矢歌子さんも、新東宝出身の女優さんだとは知らず、ましてや(今や大好きな)三原葉子さんも前田通子さんも知らなかった。しかしちゃんと映画史を知ると、邦画で初めての全裸シーン(後姿)という項目で度々、前田さんが登場することになった訳だ。

というわけで阿佐ヶ谷ラピュタで前から気になっていた「女競輪王」を鑑賞。そもそも現在、女子の競輪が存在しているのかという疑問もあるのだが(それは別なところで調べよう)、この映画は前田通子さんのお色気路線ではく、一家を支えて競輪選手を目指す、女の子のスポ根物語だ。

一年ごとに競輪学校を卒業して、選手になり、グランプリ競争を勝ち、チャンピオンになれるのは一人だけ。まさにこれをブロードウェイの置き換えたのが「イヴの総て」と思わせる、成り上がっていく主人公が最後には次の世代に取って代わられる予感。ここで映画は“栄光にしがみ付く虚しさ”に目覚めた主人公があっさりと競輪をやめて、ず〜っとスキでいてくれる彼氏と結婚を決意するラストを用意する。

確かに入浴シーンでのサービスカットはあるが、この映画の前田さんは、まるで某TV局のアナウンサーのように爽やかな魅力の方が勝っている。まあ、三原さんの妖艶さとは、全く違う色気の女性なのだから、このような母一人に妹と弟の一家が後ろにある役柄も演じられるのでしょう。

でも、その抜群のプロポーションはここでも健在で、競輪のユニフォームから盛り上がる胸の膨らみは見事なもので、その美しさはイタリアのシルヴァーノ・マンガーノを思わせ、本当に眼を奪われる。もっとも肌の露出というほうを期待するのであれば、後の上映となる「海女の戦慄」のほうが『ニコニコ』ですけどね。

これからも文芸作品もふくめた新東宝作品を追いかけて、抜けている自分の映画史のピースを埋めていかなければ、だね!