やはり代表作になるのだろうなぁ

「徳川女刑罰史」と「やさぐれ姐御伝総括リンチ」の2本はやり石井輝男監督の代表作になるのだろうなぁ。監督の代名詞ともいうべき『エログロ』要素が最もキチンと盛り込まれているから当然なのだろう。

しかし、以外や「徳川〜」はタイトルバックこそグロテスクに女の首をたたき切ったりして見せるが、本編(3話のいわゆるオムニバス映画)は『偏愛』『女の嫉妬』『男の執念』というそれぞれに根底のテーマを設けているので、そのドラマ性に惹かれる。

第1話のいわゆる近親相姦もの。よく見れば長屋ものでもある。エロは兄の怪我を直したい一身の妹が金で上田吉二郎に強姦されるあたりで、グロはご法度である近親相姦を白状させられそうになる『縛りと責め』であるが、基本は兄妹の偏愛。ラストの妹の死刑の方法の逆さ十字架での、満潮死刑は、あの鈴木則文監督の「徳川セックス禁止令」で将軍がサンドラ・ジュリアンを殺すのと同じ方法でビックリ!

第2話の尼さんの嫉妬で、同じ尼の股間に火棒押し付けの刑が劇中一番のグロいシーンかもしれない。しかしこの2話目の前半はエロで、男を求める尼さんのシーンが(剃髪した女体というやつですね)そそるというもの。

3話目は「闇の中の魑魅魍魎」の刺青版ともいうべき、小池朝雄扮する江戸で1番の彫物師が理想の女の肌に、本当の責め苦の表情をもった『絵』を彫る話。全3話通じて出てくる渡辺文雄演ずる拷問狂いの代官が、この彫物師とともに長崎へ行ってキリシタン取締りと称して、外人女を攻め抜く。その表情を狂ったように女の肌に彫っていく彫物師。この3話目が一番エログロご都合主義ではない“一世一代の彫物”へのこだわりが物語の前提にあり納得させられるのであった。

ともあれ、そこには人間がもつ感情の果てに、様々な悲劇が待っているという一貫した構成があり、やはり石井監督の手腕の巧みさを見ることが出来る。

そして「〜総括リンチ」(全共闘世代から取ってつけたタイトルだろう。よって中身とはあまり関係ない)はポルノ版「緋牡丹博徒」というべき傑作で、これぞ(まあ知られたことだが)タランティーノが丸ごと「キル・ビル」真似した有名なラストの格闘がある。そもそもタイトルバックのスローモーションの格闘シーンからして「緋牡丹〜」ですよね(なんの巻だったか失念!)。そしてこれぞ石井監督の代表作と共に池玲子さんの代表作でもあるますね。

実は当時の東映二大ポルノ女優では、池さんより杉本美樹のほうが好きだったが、今になってそのスケール感もボディも演技も池さんのほうに軍配があがっていたんじゃないかと思っているのですよ。首に赤いマフラーを巻いた女軍団はケッコー仮面の原型でしょ。その女軍団と猪の鹿お蝶(池)がやくざの麻薬運搬にまつわる悪事を暴き、最後の大乱闘(全員素っ裸!!)でやっつけるという痛快さだ。

作劇のテンポの見事さで、お蝶が若い日に恩を受けた親分(嵐寛寿郎!!)との過去や、その時に争いがあった親分とのタイマンでの賭場勝負など、仁侠映画としても描かれる部分はきっちり押えてあるのが嬉しい。まあ、やはりこれ見ずして石井輝男は語れないのが「〜総括リンチ」ですね。