アニメって、そんなに簡単なものじゃないぞ

今年は洋画、邦画ともにアニメーションがなかなか楽しめるものが多く、こんなオヤジでも結構見ている状況だ。さすがに「ドラえもん」「ポケモン」は卒業だが、「しんちゃん」「コナン」は相変わらず楽しみ、その後の洋画「トイ・ストーリー3」「ヒックとドラゴン」の2本が眼を見張る面白さで、そこに日本アニメの真打であるジブリの「アリエッティ」が登場という具合である。

実はアニメは、そんなに深くなく、小学校6年から大人の邦画を見始めてしまったので(今でいうR-15指定のような映画「その人は女教師」とか「出所祝い」とかだ)限りなくマンガを子供向けとして見下す(自分が子どもなのを棚に上げ!)ようになり、同世代が熱狂した「銀河鉄道999」も「宇宙戦艦ヤマト」も「幻魔大戦」も「カリオストロの城」も」スルーであった。

ジブリが映画であると“ビックリ”したのも「トトロ」からであり、「ナウシカ」「ラピュタ」は見向きもしなかった(よって今だにこの2本は見ていない、いつかスクリーンで見られたらと思って待っている)。例外はディズニーだけで、洋画の映画史を辿れば必ずウォルトの名前にぶち当たるわけだから、確認しなければならなくなり、触れるようになった訳だ(同様なのは「スヌーピー」の映画版かな?)。

昨年のアニメでお気に入りは「マイマイ新子と千年の魔法」。こういった大人向けのアニメをどんどん作って欲しいと思ってもやはりアニメ市場は子供向け。では子どもだけ楽しめるものって面白いか?いや、こどもが面白ければ大人も楽しめるはずはないでしょう。「トイ3」「ヒック」を見ればそれが証明されているでしょう。

そんな期待を持って見たのが「昆虫物語みつばちハッチ〜勇気のメロディ〜」だったが残念ながらハズレであった。大人が飽きてしまう話の展開の鈍さに子どもが飽きないわけないでしょう。話のはじめにスズメバチにミツバチが襲われる活劇シーンまではいいのだが、中盤ハッチが母を捜す旅に出て様々な昆虫に出会う展開の緩さったらありゃしない。話の構成である起承転結の転結はそこそこ誰でも描ける。一番難しいのが『承』の部分で、この映画はここが駄目!

そこが、例えば世間知らずのハッチが昆虫の世界の掟を勉強しながら悩み、しかし母を助けねばと決断して成長していくと持っていけばなんとかなったものを、適当に少女と話せることにして人間まで巻き込む。ここは「バグズライフ」同様に昆虫の世界だけにすべきだった。他の昆虫もハッチになにも教えず、スズメバチの所に行くなというばかりで全く話がころがらないのである。

唯一の見所はラストのスズメバチとその他の昆虫軍団の、雨の中の一騎打ち。こりゃ「七人の侍」だったのだ、とちょっと見直した時はもう遅かった。あまりにもTVで人気だったアニメの知名度で儲けられるだろうという安易な発想の敗北だ。こんだけ世に良く出来たアニメが登場しているのだから、観客の目は肥えているともっと認識するべきであろう。

アニメって簡単に儲けられるんじゃない、なんて思っていたら大間違いだ。「ハッチ」が本当に今の観客に響くキャラクターなのか?人間を登場させるべきなのか?TV的ではなく映画として作るためにどうすべきか?など本当にセディックと小山薫堂氏は論議を重ねて作ったのか?アニメってそんな簡単なものじゃないなぁと改めて教えられましたね。