高良健吾と谷村美月

なんかのTV番組で日本全国各地の花火大会の番付かなにかをやっていて、一番多く選ばれていた県は新潟県だった。長岡の花火は有名で、なおかつ日本海に面しているので、花火の打ち上げには適しているのかなどと勝手に想像してしまった。なんとその新潟県の花火大会を物語のバックボーンにした映画が出来てしまった。「おにいちゃんのハナビ」である。

物語は崩壊している家族の中の、娘が死ぬことでの、その家族再生というもので、わりとあるパターン。よってストーリーどうのではなく、舞台となった新潟県小千谷市片貝のご当地映画
的魅力と主演のふたりの俳優についてコメントしよう。

たぶん新潟県の先行上映では「マリと子犬の物語」以上に大当たりするんじゃないかと確信できるくらい地元に根付いた出来栄え。主人公一家は妹の病気のため東京から引っ越して来た設定なので、その一家がいわゆる土地の人間になるまでがキッチリと描かれる。これは地元では喜ばれるでしょう。

タイトルロールのおにいちゃん役は“仕事しまくり”の高良健吾加瀬亮に負けずに映画にこだわっているためか、2010年だけでも「バンデイジ」「ソラニン」「ボックス!」とこの映画(他にも「雷桜」にもちょっと)と、なんという多さ。「ボックス!」で初めて男らしい役に挑んでかなり見直したばかりだが、今回は引き籠もりの20歳の青年役でまあ、タイプキャストかもしれないが、後半妹のために花火を上げようと変化していく様を的確に演じている。

一方、白血病の妹役谷村美月。ここが問題。彼女は達者な若手俳優だとは思うが、他に誰かいないのか、と思ってしまうぐらいまた病気で死ぬ役だ。「ボックス!」でもそうだったし、「リアル鬼ごっこ」も病人(というか入院患者)TVの「パンドラ」もガン患者役。スキンヘッドで頑張っているがタイプキャストの典型で、OKなひとは安心して見ているだろうが日本映画の役者の層はこんなもんか、とも思うぞ。

若い二人の脇を固めるのが、宮崎美子(またまた泣くお母さん役、これも他にいないのか!!)大杉漣塩見三省佐々木蔵之介佐藤隆太(うざい先生役、これまたタイプ!)とパターンに嵌ってはいるが、成功の部類といえるだろう。20歳の青年会の仲間の連中が意外とよく、この連中に認められていくその成長過程が映画の肝でしたね。

監督は知らない人だなあ、と思っていたら国本雅広という人で、なんとTVの「瑠璃の島」の演出家であった。道理で手馴れた演出なわけだ、と納得。かなり泣かせる映画にはなっているが映画であるべきか?と言われるとスペシャルTVドラマかもしれないなぁ。そこがインディーズ日本映画の必ずぶち当たるところでじゃないかな。